なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋

東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」

2018年4月から今年3月まで2期に分けて実証実験を行った伊豆の観光型MaaS「Izuko」(写真:東急)

近年、交通関係のキーワードとして話題にのぼることの多い「MaaS(マース)」。スマートフォンなどIT技術を活用して鉄道やバス、タクシー、自転車などさまざまな交通手段を1つのサービスとして結び付け、スムーズな移動を可能にしようという取り組みだ。

東急やJR東日本などは2018年4月から今年3月まで、伊豆半島で2回にわたり観光型MaaS「Izuko(イズコ)」の実証実験を展開した。同プロジェクトのリーダーを務めた東急の交通インフラ事業部課長、森田創氏は7月、事業の立ち上げから実証実験までの舞台裏を描いたドキュメンタリー『MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る』(講談社)を出版した。

森田氏はこれまでに2冊の著書があるノンフィクション作家としての顔も持つ。MaaSプロジェクトの裏側と、自らがリーダーを務める事業を題材とした作品への思いについて聞いた。

MaaSと聞いて「ムースですか?」

――2018年春に広報課長から新設のMaaS担当部署に異動されたのが、今回の「Izuko」のプロジェクトの始まりですね。MaaSについてはもともと関心があったのでしょうか。

知らなかったです。最初にMaaSをやれと言われたときはムースと聞こえたので、「お菓子ですか?」と言ったら社長に「バカかお前は」と(笑)。すぐに「モビリティ・アズ・ア・サービス」で検索したんですが、そのとき(2018年3月)は日本語で体系化されたレポートはまだなくて、日本では言葉としてもまだ広まっていませんでした。

――野本弘文社長(当時。現・東急会長)にMaaS担当部署への異動を告げられる際、「場所は北海道がよさそうな気もするが、それも含めて自分で考えろ」と言われる場面が出てきます。当初から伊豆を念頭にスタートしたプロジェクトではなかったのですね。

そうなんです。伊豆を選んだきっかけは2018年の5月下旬、スマホをいじっているときにJRが翌年4月から「静岡デスティネーションキャンペーン(DC)」を行うというのを見つけて、これはいけるんじゃないかと思ったことですね。伊豆は伊豆急行をはじめ東急グループが展開する重要拠点ですし、実証実験で頻繁に現場に行くことを考えると、(会社のある)東京から行きやすいメリットもある。そして静岡DCが追い風になるなと。この3点で、伊豆を舞台にしようと決めました。

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