なぜ自分が?「MaaS」生みの親が語る苦難の道筋 東急の「観光型MaaS」リーダー、2年間の「戦い」

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――MaaS担当を命じられた当初は「まったく乗り気ではなかった」と。かなり落胆されたようですね。

そもそも僕は異動で違う仕事をするはずだったんです。そこで「何で自分がMaaSなんだよ」というのもありましたし、自分は過去に交通事業の経験がゼロでしたから、自信がないというのもありました。交通はしがらみがあるというイメージもあって。鉄道は鉄道、バスはバス、と厳然とした垣根があるところをシームレスにするような仕事だなと思うと、漠然とこれは猛反発を受けるのではないか、自分にできるのだろうかと。

――プロジェクトチームは森田さんと3人の部下でスタートしています。チームのメンバーはかなり個性的な方々だったようですね。

森田創(もりた そう)/東急交通インフラ事業部MaaS担当課長。1974年神奈川県生まれ。東京大学教養学部人文地理学科卒業。1999年東京急行電鉄入社。渋谷ヒカリエ内の劇場「東急シアターオーブ」の立ち上げ、広報課長を経て現職(2018年・記者撮影)

個性的すぎましたね。1人は英語が母国語の不思議な奴、1人は一言も話さない、そして1人は「僕はマグロだから泳ぎ続けないと死んでしまう」といって来ない。最初はやったこともないことをこのメンバーとどうやって進めていくのか、本当に手探りでした。

他社との協力を進めるときも、どこにいけば誰がいるのか、いろいろな人に聞いて会いに行って仲間を増やして……という感じで。ヘンテコなメンバー3人を引き連れてトコトコ歩いていくという、なんだか「ドラクエ」みたいですね。呪文とか魔法は使えないんですけど(笑)。

でも今回本を書いて、彼らに本当に助けられたんだなと改めて素直に感謝できました。本当にありがたいことだなと思っています。

手探りで続いた改善

――「Izuko」の実証実験は2019年4月1日~6月30日の「フェーズ1」と、同年12月10日~2020年3月10日の「フェーズ2」の2期に分けて行われました。最初は不安も多く手探りだったとのことですが、「これでいける」と自信が持てたのはいつ頃ですか。

今年の2月ですね。それまでは本当に不安だらけでした。フェーズ1はとにかく静岡DCに合わせて立ち上げるんだということで、最初の1年間は正直なところそれだけで必死だったんです。フェーズ2はサービスの見直しを図り、スマホのアプリからブラウザ上でウェブサービスを使う形に切り替えて、使いやすさは大幅に向上しました。

でも、フェーズ2を開始してしばらくはそれほど利用が増えなかった。いけるなと思えるようになったのは伊豆にとって繁忙期の2月に入ってからです。フェーズ2では管理画面でどんなお客様がどの商品をいつ買ったか、どの商品がどこで売れているかといった傾向が見られるので、お客様に合わせた提案の仕方や宣伝の方法などのコツを完全につかんできたんですね。

ところが2月後半になると新型コロナの影響が表れてきて……。不完全燃焼ではないですが、こんなはずじゃなかったという思いは多少なりともありました。ただ、画面を見せるだけで交通機関などを利用できるMaaSは対人接触を避けたい今の行動様式に適していますし、まさに出番なのではないかと思います。

今秋からフェーズ3を再開しますが、次は実証実験を超えて、本当に伊豆のためになるサービスになれるかどうかが試されると思っています。

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