JVCケンウッド、終わらない「縮小均衡」 異業種から社長招聘するが河原CEOは留任

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縮小
JVCケンウッド本社

この日にJVCケンウッドが発表した2014年3月期決算は、売上高こそ円安効果によって前期比3.2%増の3163億円となったものの、営業利益は同54%減の44億円と大幅に落ち込んだ。支払利息の負担が重いため、経常利益は赤字に沈み、368人の早期希望退職に伴うリストラ費用も響き純損失は65億円まで膨らんだ。2期行った5円配当から、再度無配に転落した。

なぜここまで稼げなくなってしまったのか。大きく足を引っ張ったのが、これまで同社の収益を牽引してきたカーエレクトロニクス部門。さらに、これまでも厳しかったビデオカメラを中心とする光学&オーディオ部門も厳しかった。

カーエレは国内市販向けこそAV一体型カーナビ「彩速ナビ」を軸に堅調に推移したが海外向けが厳しく、また対米ドルの円安による円換算原価の上昇が響き部門赤字に終わった。円安に対応し約2割超のコストダウンを行なった2014年モデルを前倒しで投入したが及ばなかった。

ビデオカメラも不採算モデルの売価見直しや販売体制の再編などを急いだが、3年前から台数半減という市場の急縮小という逆風を跳ね返せず、部門利益は均衡圏にとどまった。

スマートフォンとの競合や代替が進む一方の市販カーエレやビデオカメラに代わり、同社が事業のシフトを急いでいるのが、カーエレOEMや北米や中国に強みを持つ業務用無線などのB2B分野だ。2013年3月期には4割だったその比率を、今2015年3月期には5割まで引き上げる計画を掲げる。ただし同社がデジタル化を背景に安定的な収益源になると期待する米国向けの業務用無線が、米国政府の緊縮財政を受け販売不振に陥っており、B2B強化路線の大きな懸念材料となっている。

旗振り役は河原CEOのまま変わらず

新経営体制で臨む2015年3月期、売上高は前期比5.2%減の3000億円、営業利益は同7割増の75億円を計画する。売り上げ減となるのはビデオカメラがさらに一段の市場縮小に見舞われるとみるほか、カーエレOEMが端境期となる点が大きい。営業利益の反転増を牽引するのは、もっぱら前期行なったリストラによる人件費削減効果の発現だ。今期は約45億円の効果を見込んでいる。

新経営体制といえども、旗振り役は75歳になる河原CEOのまま変わらない。「カーオプトロニクスと先進車両技術」「ブロードバンドマルチメディアシステム」「次世代イメージング」・・・、今期は年間30億円を投資し、次世代の成長基盤開拓に務める。しかし、短期的に花開くのは難しい。当面は縮小均衡路線を余儀なくされそうだ。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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