不動産投資法人(J-REIT)業界の見通しはネガティブ、収益性の低下に財務も悪化《ムーディーズの業界分析》

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ストラクチャードファイナンス・グループ
アナリスト 山本 秀康

 日本の不動産投資法人(J-REIT)業界の見通しはネガティブである。この見通しは向こう12~18カ月間の業界のファンダメンタルな信用状況についてのムーディーズの見方を反映したものであり、景気後退の影響で不動産賃貸事業の収入が低下傾向にあること、および、ここ数年の積極投資で上昇したレバレッジの影響で財務の柔軟性にストレスがかかっている状況を反映している。

事業環境

不動産賃貸事業をコアビジネスとするJ-REITセクターにおいては、景気後退の影響が賃料収入減少の形で収益の圧迫要因として顕在化している。

景気の低迷の影響で賃貸オフィス全般の需要が軟調になっている。空室率の上昇に起因する賃貸条件の軟化傾向が明らかで、事業収益の圧迫要因となっている。セクター全体において運用資産としてポートフォリオの過半を占めているオフィスにおいて影響が色濃く出ているようだが、その他運用資産である住居、商業施設、物流施設に関しては、より個別性が強い場合もあることから、影響度に濃淡の差はあろうが、事業環境にはストレスがかかる状況が継続している。

J-REITを取り巻くこのような不動産賃貸事業環境が、アウトルックをネガティブとした要因の一つである。賃貸事業収入を左右する不動産賃貸市況回復のタイミングが今後の鍵となろう。賃貸市況回復のタイミングは景気回復に遅効性を伴うものであり、今後の景気回復の足取りによっては、その先の空室率改善と賃貸条件の安定化にいましばらく時間を要するだろう。今回の不動産賃貸市場は、非常に堅調だった賃貸市場の急激な反転を特徴として、軟化が急速であった。反動で新規供給の調整が起こることなど、今後の需給環境動向と景気の先行きによっては、現在採用している見通しよりも早期に調整が進む可能性も否定はできず、その場合は比較的早期にアウトルックを見直すこともありえよう。

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