不動産投資法人(J-REIT)業界の見通しはネガティブ、収益性の低下に財務も悪化《ムーディーズの業界分析》

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官民での支援と業界再編の動向

運用会社の変更や実際に発行体同士の合併の計画発表が急増しているが、このような再編のトレンドは事業環境にストレスがかかる間、淘汰・再編にメドがつくまで継続しよう。J-REIT発行体同士の合併においては、例えば事業規模の拡大、統合による経費削減、スポンサーの信用リスクが懸念材料であればその排除、などの効果が期待される。ただし、セクターの性格上、事業ポートフォリオの多様化に関わる効果やフランチャイズの拡大などの合併によるシナジーは、一般的な事業会社の合併・買収の場合に比較して限定的なものとなろう。合併比率などの条件次第では、配当の増加や、負ののれんを活用した含み損緩和、資産入れ替えにおける配当への負担の緩和などが期待されよう。一方で、財務内容の劣る発行体との合併においては、財務の柔軟性に影響が及ぶことも懸念される。合併後の取引金融機関との関係再構築も重要な課題となるだろう。合併後の財務運営を如何にマネジメントできるかが当面の鍵となろう。

投資活動の再開とその影響

金融危機以降およそ1年4カ月のブランクを経て、10、11月の2カ月間に4社の発行体において公募増資が発表された。4社の公募増資から共通してよみとれることの一つには、配当水準の維持・向上に運営の関心が高まっている様子である。これらの増資を組み合わせた投資活動は、ポートフォリオの拡大と同時に財務内容の改善につながる動きとしてポジティブに捉えられようが、配当政策が運営の主要課題である間は、財務内容の改善速度を緩やかなものにする可能性がある。万一、配当政策のために利回り確保が優先され、ポートフォリオの質を犠牲にすることがあれば、将来の運営に負担をかける懸念があろう。

レバレッジの上昇と財務運営の課題

ここ数年発行体の平均的な財務レバレッジは上昇している。多くの発行体が積極的な新規不動産投資を続けてきたことと、および投資に際してエクイティーよりもデットによる資金調達を選好して行ってきたことがLTV上昇の主な理由である。2009年度には新規投資の活動が停滞したことからレバレッジの上昇にはブレーキがかかったが、金融機関が融資に慎重になったことも理由の一つであろう。

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