サイゼリヤ、社長も驚く「1円値上げ」の成果 50円単位の設定でコイン受け渡しを大幅削減

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――この状況はいつまで続きますか。

深夜営業はできれば再開したくない。本当は22時で終わりたいと前から思っていた。深夜は治安が悪いし、当社は22時までの営業で利益が出る体質を作ってきた。

損益分岐点を下げて、80%の売り上げでも利益が出る体質を目指す。「8割で利益を出す」目標から逆算して、すべての戦略を見直している。コロナをきっかけに、今まで変えられなかったことも聖域なく全部変えていく。

想定以上だった価格改定効果

――改革の象徴の1つが、ミラノ風ドリアの「1円値上げ」などの価格改定ですね。

価格改定の効果は思った以上にあって、面白いし、びっくりしている。

最大の意図は、コインの受け渡しを削減することにあった。コロナ禍によって、顧客も従業員もコインのやり取りをなるべく避けたい。すべての商品の価格を50円単位にすることでコインの受け渡しを6~8割減らせると想定し、実際にその通りになった。

ほりの・いっせい/1957年富山県生まれ。1981年京都大学大学院農学研究科修了後、味の素入社。2000年サイゼリヤ入社。同社オーストラリア社長、商品企画部長などを経て、2009年に創業者の正垣泰彦・現会長)に代わり、2代目社長に就任(撮影:尾形文繁)

会計にかかる総時間も30%減少した。ぴったり払いやすい金額になったことで、釣り銭を渡す時間が減った。自分が食べた分の金額が500円、600円などとキリのいい金額なので、レジに来る前にグループでまとめてくれることも多くなった。価格改定で個別会計は25%減少した。

――予想以上の効果ですね。

さらに面白いのが客単価が上がったこと。当社の客単価は700円台前半だったが、50円や100円刻みの値段設定にしたことで、ちょうど合計1000円を目安に注文する顧客が増えた。

加えてTwitterなどで「1000円ガチャ」(サイゼリヤのメニューから1000円ちょうどになる組み合わせをランダムで表示するWebページ)が話題になった。あれを見て、1000円ちょうどになるように注文する顧客が増えたのかもしれない。1000円ガチャ様々だ。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

ミラノ風ドリアをはじめ、大半の商品は1円値上げになったが、一方でライスは169円から150円へ、ランチドリンクバーは110円から100円へ大きく値下げした。そのため、客単価が下がると恐れていたが、全然関係なかった。

価格改定は大正解。他社にもおすすめしたいぐらいだ。ただ、当社はずっと税込みの価格表示にしてきたからすぐに改定できたが、税抜きの価格設定をしているところは、税込み価格を50円単位にそろえるのは難しいだろう。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、アフターコロナ時代の出店戦略やテイクアウト戦略についても語っている。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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