世界最速「走る美術館」、現美新幹線なぜ引退? 現代アートも車両の老朽化には勝てなかった

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トンネルが多く、車窓が楽しみにくい上越新幹線の特性を逆手に取り、12~16号車(秋田新幹線時代と同じ車番であり、6両編成だが車番は11~16号車である)の座席は側窓ではなく、芸術作品の方を向けられている。車窓ではなく車内の芸術を楽しむという斬新なコンセプトは、世界を見渡しても唯一無二のものだ。

13号車の一部にはカフェスペースが設けられている。新潟県内の食材を用い、菓子研究家・いがらしろみ氏監修による「十日町すこやかファクトリー」が手がけたスイーツや、沿線で人気の「ツバメコーヒー」によるこだわりのコーヒーを楽しめる。

同じ観光新幹線の「とれいゆつばさ」にもバーカウンターがあるが、とれいゆつばさは基本的には最高時速130kmの山形新幹線内のみの走行なので、「新幹線を走るカフェ設備」を持つのは現美新幹線のみである。

筆者は運行開始初日に乗車したが、車内を移動してアートを楽しむ乗客が非常に多かった。通常の新幹線とは比較にならない通路の移動客数に驚いた記憶がある。カフェのグレードも高く、燕市のブランドが手がけたスプーンやフォークは非常に高品質と感じた。 

カフェに隣接したフリースペースでは、アテンダントが見守る中、子どもたちがプラレールで遊ぶこともでき(現在では新型コロナウイルス対策で中止)、笑顔が印象的だった。

2018年春にリニューアル

なお、現美新幹線の走る新潟県はアートへの理解が深い土地でもある。2000年より、3年に一度「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」を開催している。現美新幹線も、2018年に開催された第7回「大地の芸術祭」に合わせて、2018年3月にリニューアルした。この時には6両編成のうち、3両で車内の展示物が一部入れ替えられ、ブライアン・アルフレッド氏に代わって新たにAKI INOMATA氏の作品が展示されるようになった。

車内のカフェメニューも刷新され、新潟名産のささだんごをイメージしたケーキや、雪下ニンジンを材料に使ったキャロットケーキも提供されるようになった。

現美新幹線でも地上の美術館やカフェと同じように、展示物の入れ替えやメニューの差し替えといったリピーターを増やす工夫が行われていたのがわかる。

第8回「大地の芸術祭」は2021年開催である。新潟県のアートを象徴する現美新幹線が、なぜ芸術祭の前に運行終了となったのか。JR東日本に聞いてみた。

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