世界最速「走る美術館」、現美新幹線なぜ引退? 現代アートも車両の老朽化には勝てなかった
「運行終了の理由ですが、車両の検査期限切れです。当初から2020年の運行終了を想定していたわけではありませんが、車両の老朽化が進んでおり、運行終了を決めました。なお、新型コロナウイルスによる運行中断は、運行終了の判断には影響しておりません。コロナ対策を進めたうえで、8月1日より運行再開いたします」(JR東日本新潟支社広報室)
現美新幹線は前述したように、秋田新幹線E3系を改装した列車である。改造元であるE3系R19編成は、2002年製造だ。高速走行で車両の負担が大きい新幹線車両の平均寿命は15年とも言われ、もともと引退の時期が迫っていたということだろう。
実際、山形新幹線では2024年に新型車両E8系が導入されて、E3系からの置き換えが進められるとの発表も出ている。現美新幹線と同時期の車両から改造された、山形新幹線の観光列車とれいゆつばさについては、運行終了の発表はなされていないが(前述したように、とれいゆつばさは最高速度が低いため、車両の負担が少ないという違いもあるのだろう)、今のうちに乗車した方がいいものと思われる。
なお、残念ながら、現美新幹線の後継となるような新幹線観光列車については「現時点では導入の予定はない」とのことである。
新潟エリアの観光列車にも注目
12月のラストランに向けて注目される現美新幹線だが、乗車するのであれば、新潟地区の観光列車群にも注目したい。
観光列車を多数抱えている鉄道会社といえば、誰もがJR九州の名前を挙げるだろうが、実は、JR東日本の観光列車「のってたのしい列車」は18列車もある。さらにそこに含められていない「トランスイート四季島」「カシオペア」を含めれば断トツの日本一である。
とりわけ、新潟地区には観光列車が多く、質と量を誇る「観光列車銀座」といってよい。 現美新幹線の運行区間と関連する、新潟県内の観光列車は以下のとおりだ。
「海里」(新潟―酒田駅間)
2019年10月に運行開始したばかりの、最新観光列車。旅行商品では新潟・庄内の食と景観を楽しむ列車として、下り列車は新潟の料亭「一〆」「行形亭」の日本料理、上り列車は「アル・ケッチァーノ」のイタリアンが提供される。
「SLばんえつ物語」(新津―会津若松駅間)
「貴婦人」と呼ばれるC57形蒸気機関車が牽引するSL列車。日本国内で最長距離を走行するSL列車だけあって、設備が充実している。編成の両端は「展望グリーン車」と子どもも遊べるフリースペース「オコジョ展望車」(現在ではコロナで人数制限あり)、編成中にもフリースペースの展望車と、売店車を備えていて退屈しない。上り、下りとも、会津若松駅で、スイーツ列車「フルーティアふくしま」へ乗り継ぐことも可能。
「越乃Shu*Kura」(上越妙高―十日町駅間)
地酒王国新潟が誇る「お酒列車」。車内では新潟県内の利き酒や、クラシック・ジャズなどの音楽演奏(コロナで一部変更)も行われる。旅行商品では新潟の「酒と食」のオリジナルメニューも楽しめる。なお、季節により「ゆざわShu*Kura」(上越妙高―越後湯沢駅間)、「柳都Shu*Kura」(上越妙高―新潟駅間)、としても運行される。
「おいこっと」(十日町―長野駅間)
上記「越乃Shu*Kura」と十日町駅で接続する観光列車。列車名は東京(TOKIO)を逆から読んだ「OIKOT」であり、日本人の心のふる里をコンセプトとしている。列車内は藁ぶき屋根や襖をモチーフとした、温かみのある和風デザイン。「野沢菜漬」「おにぎり」「日本酒」「りんごジュース」などのふるまい(現在はコロナにより中止)も魅力的だ。
なお、第三セクター・えちごトキめき鉄道のレストラン列車「えちごトキめきリゾート雪月花」(上越妙高―糸魚川駅間)も新潟県を走る観光列車であり、こちらも合わせて運行状況をチェックしたい。
【2020年8月1日11時05分追記】初出時、「えちごトキめきリゾート雪月花」の記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。
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