「中高生の感染」が実は最も看過できない理由 韓国大規模調査が示す学校クラスターの懸念

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ほかの専門家たちも、この調査の規模と分析の精度を高く評価している。韓国の研究者たちは、学校が閉鎖されていた1月20日~3月27日に世帯内で初めて新型コロナの症状を報告した5706人を特定し、これらの「発端患者」たちが接触した5万9073人の追跡を行った。世帯内の接触者については症状の有無にかかわらず全員検査し、世帯外の接触者については有症状者のみを検査した。

世帯内で最初の感染者が必ずしも最初に症状を呈すとは限らないという制約があることは、調査を行った研究者たちも認めている。また、子どもは大人より症状を示す可能性が低いため、この調査では世帯内で感染拡大の発端となった子どもの数が実際よりも低く見積もられている可能性がある。

それでもこのアプローチは理にかなっていると、専門家たちは口をそろえる。「この研究は接触追跡が見事に行われている場所で、きちんと介入がなされている時期に実施されたものだ」と、ハーバード大学公衆衛生大学院の疫学者、ビル・ハネージ氏は語る。

市中感染を広げるおそれ

10歳未満の子どもが他者にウイルスをうつす可能性は大人のおよそ半分であり、これはほかの研究結果とも一致する。その理由としては、子どもは一般に大人よりも吐く息の量が少ない、つまり呼気に含まれるウイルスの量が少ないか、あるいはより地面に近いところで息を吐いているので大人が吸い込みににくい、といった事情が挙げられる。

それでも、学校が再開されれば子どもを感染源とする新規感染が増加しかねない、と研究論文の執筆者たちは警鐘を鳴らす。論文では「学校再開後には低年齢の子どもの罹患率が上がる可能性があり、新型コロナの市中感染の一因となるおそれがある」としている。

そのほかの研究でも、学童は1日のうち多くの時間を何十人というほかの子どもたちと接して過ごすので、たとえ他者に感染させるリスクが低かったとしても、そうした効果は相殺される懸念がある、といった指摘が出ている。

韓国の研究者は体調の悪い子どもに限定して接触者を追跡したため、無症状の子どもがどれだけウイルスを周囲に拡散させているかは、まだよくわかっていない、とジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院の疫学者、ケイトリン・リバーズ氏は語る。

「症状の出ている子どもはこれまでも感染力を有すると考えられてきたが、こうした理解は今後も変わらない」と同氏は言う。「問題はむしろ、無症状の子どもが感染を広げているのかどうかだ」。

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