日本の中高生だけが柔道で亡くなる驚きの実態

強豪他国はゼロなのに日本は「121人死亡」

これと同様の声が、柔道指導者からも聞かれる。

バルセロナ五輪男子柔道86キロ級銅メダリストで筑波大学体育系准教授の岡田弘隆さん(53)は、日本と他国で違いが生じている理由を「指導者の問題であることは間違いない」と話す。

柔道クラブ「つくばユナイテッド柔道」を2008年に設立。少年柔道の指導、普及に尽力するなかで「一部の指導者に安全に対する配慮が足らないのではないか」と感じている。

「安全な指導は、最初に受け身を徹底することが肝心。指導者が上手に投げてあげて、たまに上手に投げられてやる。そのときに子どもは一本を取る喜びや楽しさを味わえる。そんな指導を身に付けなくてはいけないが、目の前の子どもを早く強くしたいと焦るとそこを飛ばしてしまいがちだ。そうするとそこに危険が生まれる」(岡田さん)。

全柔連は2013年にそれまでなかった指導者資格制度を作り、重大事故総合対策委員会を設けるなど安全対策を講じてきた。「初心者には大外刈りの投げ込みを受けさせない」など指導上の禁止事項を通達しているが、指導者の意識改革は道半ばのようだ。

中高生の競技人口が減る柔道

そんななか、日本の「お家芸」柔道は、競技人口減にあえいでいる。

柔道事故や、2011年の男子金メダリストによる大学の女子部員への準強姦事件、2013年の女子日本代表監督によるパワハラといった不祥事が相次ぎ、柔道はイメージダウン。それらが影響したのか、昨今は競技人口の減少に悩まされている。

全日本柔道連盟によると、6月初めの会員登録者数は5万5000人。コロナの影響で登録手続きがスムーズでないとはいえ、昨年の同時期の半分以下にとどまる。2019年度の登録者数はおよそ14万人。ここ数年は、毎年5000人規模で減少している。

全柔連が有力選手らのメッセージを発信し、登録を促していこうとした矢先の6月中旬、男子90キロ級の東京五輪代表に内定している向翔一郎(24)が、YouTubeで喫煙シーンや特定の人物を中傷するような動画をネットにアップし問題に。出鼻をくじかれた形だ。

他のスポーツの競技人口と比べるとどうなのか。

以下は、中学生の代表的なスポーツの競技人口の推移だ。日本中学校体育連盟(中体連)が発表している加盟生徒数のデータを例に、直近の2019年度と2009年度の10年間の推移を他のメジャースポーツと比較したものだ。幼少期に開始した競技を継続する過程で、受け皿になり得るか否かの分岐点であることから、中学生年代を選択。種目数が多岐に分かれる陸上競技以外で、加盟生徒数10万人以上の主なスポーツと比較した。ここでは男子のみとする。

部活動で柔道をする男子中学生は35%減。47%減となっている軟式野球ともに、状況は深刻だ。

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