「地球生態学」で暮らそう 槌田敦著
30年前「地球は(閉じた)宇宙船地球号ではなく、入り来る太陽熱と宇宙への廃熱の放出とで成り立つエンジンである」と主張した著者が、その集大成として地球のエネルギー循環を生態学の視点から詳細に述べた異色の書。
エネルギー、元素、水、養分などが陸地と海洋をどのように循環するのか、それが産業や社会をどう規定しているのかなどエントロピー概念も適用しつつ丁寧な説明が続く。
中世にはげ山だらけだった日本が森林国家になったいきさつ、雨が降らないから世界が砂漠化するのではない話、川を下っていく養分が山地に遡っていく仕組み等、興味深い話題が随所にある。
中でも生物の糞や死体が陸や海で循環しつつ重要な役割を果たすことについての記述は著者の独壇場だ。「耕さない農業」はじめ自然に寄り添って暮らすためのヒントも興味深い。
地球環境、農林・漁業はじめ、われわれの暮らしを考えるうえの問題提起がたっぷり詰まっている。(純)
ほたる出版 1575円
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