デジタル化で幹部のキャリアパスに大異変! 日本企業の命運は「変革ミドルの育成」が握る

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ではそうした人材(デジタル人材、ミドルリーダー)をどのように獲得・育成、あるいは処遇していけばよいのでしょうか。

以下、デザインシンキングによるコニカミノルタの変革ミドル獲得、役員フラット化による既存秩序の破壊を行うトヨタ自動車、そして有期雇用形態を活用してデジタル人材を獲得する大日本印刷の例をご紹介したいと思います。

DXには、顧客・ユーザーを真に捉えた事業創造や業務改革を推進できる「変革ミドルリーダー」が必要となります。

コニカミノルタは売上の7割を占める情報機器事業がペーパーレス化やデジタル化の波を受け、顧客へ提供する価値の転換が求められています。これまでのような「モノ」売りから、人間を中心に見据えた「コト」売りへのシフトが必要になっており、そのような状況下で同社は「メーカー視点」でなく「顧客中心視点」に立ったデザインシンキングの社内浸透を進めることでDXに不可欠なミドルリーダーの獲得を図っています。

具体的にはデザインシンキングの浸透にあたり、目指す姿を「各事業のプロジェクト全体にわたって実践行動が当たり前に行われている姿」と設定し、創造的実践行動の指導者・推進者のリーダーを「デザインシンカー」とし、そのような人材が組織のそこかしこに散らばる状態を作り出し、高い価値をつねに生み出し続ける企業となることを掲げています。

このゴールに向けて、座学としての概論から始まり、実践版としてのトライアルプログラムまで用意しています。さらに、学ぶ対象者を組織におけるポジションにより層別し、立場に即した内容に組んでいるのです。

トヨタはフラットな「幹部職」を新設

また、トヨタ自動車は2019年、常務役員、常務理事に加え、従来基幹職と呼ばれていた管理職層の部長級、室長級、技範級の社員ランクを統合したフラットな「幹部職」を新設しました。

この幹部職の新設により、柔軟な抜擢人事が可能となりました。トヨタは自動車産業全体でCASE(Connected,Autonomous,Shared,Electric)と称される技術革新が進む中で、適所適材を実行するために、まずは経営層の階層をフラット化し、事業活動において求められる過去にないスピード感を実現するとともに、柔軟な人材配置を実現可能にする素地の構築を図っています。

フラット化は、まさに100年に一度の大変革の時代を生き抜くために、若手やベテランにかかわらず柔軟に抜擢することが狙いといえます。

さらに2020年3月には、副社長職を廃止、執行役員へ一本化する組織改正を発表し、トップも含めて組織をフラットにすることで改革のスピードを速めるとともに、有望な次世代リーダーを見極め、素早く適任人材を登用するための体制を強化しているのです。

旧来型の考え方を大幅に脱し、破壊的なスピード感で物事を前に進める体制を構築することも求められる制度基盤整備の1つといえます。

次ページ大日本印刷の取り組み
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事