「大阪の観光業」コロナ終息後に盛り上がる根拠 外国人旅行客を「5年で3倍」にした高い潜在力

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また関西には、全国の国宝・重要文化財建造物2497件のうち約42%が、国宝226件に限れば実に約71%が集中しており、まさに観光資源の宝庫です。

(出典:『大阪の逆襲』)

九州から関西に転勤してきた友人から面白い話を聞きました。彼は九州時代に国宝を見たことはほとんどなかったといいます。それが関西に来ると、すごく小さなお寺にも国宝があることが多く、お寺によっては、重要文化財の隣に重要文化財があって、その奥に国宝が何点もあるという状況に大変衝撃を受けたとのことでした。「世の中に国宝ってこんなにあるんだ」という彼のコメントは忘れられません。

近隣の中国、韓国、台湾、香港からの訪日客がリピーター化してきた中、かつての「爆買い」は影を潜め、より多様な体験、日本ならではの経験がしたいというニーズが高まっています。

スキーやスノーボードなどのリゾート・スポーツ体験に加えて、写経や座禅、精進料理を味わえる「高野山の宿坊」といった、関西ならではの「コト消費」が人気です。

ほかにも、アート感覚を刺激する「京都の和食サンプルづくり」や、隠れインバウンドスポットとして人気を集める「カップヌードルミュージアム 大阪池田」での自分オリジナルのカップヌードルづくりなど、「コト消費」の体験内容はさまざまあり、インバウンド消費の次のあり方をリードしていると言えます。

コロナ後の「旅行ブーム」の準備も万端

インバウンド増により大阪・関西が活況であることは、ホテルの建設ラッシュからも顕著です。ニッセイ基礎研究所のレポート(2019年)「都道府県別にみた宿泊施設の稼働率予測」によれば、訪日客の増加に対応するためには、2020年時点で大阪に2017年比1.4万室、2030年には1.9万室の客室増が必要と試算されています。

『大阪の逆襲』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

これに対し、阪急阪神ホテルズは、2019年に1032室の「ホテル阪急レスパイア大阪」を開業しました。また、アパグループは2019年に900室を超える「アパホテル&リゾート〈御堂筋本町駅タワー〉」を開業し、さらに2022年末に1700室超のホテルを梅田で開業する計画も発表しています。

このように、2020年までに大阪では2万室のホテル客室の増加が予定され、大幅な拡大需要に応えようとしているのです。少し前までは、大阪でホテルが予約できないとの声も聞かれましたが、先述のように民泊も拡大し、ホテルの客室数も増えているので、これからは好みのスタイルで関西旅行がしやすくなるはずです。

観光資源が豊富で、宿泊施設もさまざまあり、バックパッカーから富裕層まで、誰にとっても楽しい関西になりつつあるのです。新型コロナ禍の終息後に予想される旅行ブームの準備はできていると考えることもできます。

石川 智久 日本総合研究所マクロ経済研究センター所長

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いしかわ ともひさ / Tomohisa Ishikawa

北九州市生まれ。東京大学卒。三井住友銀行を経て現職。大阪府の「万博のインパクトを活かした大阪の将来に向けたビジョン」有識者ワーキンググループ委員、兵庫県資金管理委員会委員等を歴任。日本経済新聞十字路など、メディアにも多数寄稿・出演。関西経済分析の第一人者。

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多賀谷 克彦 朝日新聞大阪経済部長

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たがや かつひこ / Katsuhiko Tagaya

神戸市生まれ。4年間の百貨店勤務を経て朝日新聞社へ。前橋、新潟支局のほか東京、大阪本社で経済記者を経験(分野は流通・食品、証券など)。2007年4月から2019年3月まで大阪在勤の経済担当編集委員。

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