東京五輪で警戒すべき「コロナ以外」の怖い病気 感染症が「輸入」されるリスクと向き合う

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しかし、ジカ熱には非常に困った一面があります。蚊媒介で感染した男性の精液にジカウイルスが入るため、性交渉で感染する可能性が高いのです。妊婦がジカ熱にかかると、「小頭症(頭部の発育が不十分であり、身体障がいや学習障がいが起こる可能性がある)」の子どもが生まれる確率が高くなるため、妊娠中の女性や妊娠を考えているカップルは、とくに注意する必要があります。

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ジカ熱は、2015年5月以降、ブラジルで急激に広がったことがありました(2017年5月に非常事態の終結を宣言)。

2016年にはリオオリンピックが開催されるということもあり、事態を重く見たWHOから「妊婦はブラジルへの渡航を控えるように」ということのほか、次のような勧告が出されました。

①ジカウイルスが性交渉で感染しうることを知り、コンドームを用いた安全な性交渉を行うべし。もしコンドームを使用しなかった場合は、緊急避妊へのアクセスを考慮すべき。そして、流行国に住むカップルは、妊娠を遅らせるべきである。
②流行地帯から帰国した男性は、妊娠中の女性との性交渉の際は、コンドームを装着し、安全な性交渉に努めるべし。
③流行地帯から帰国した男女は、妊娠を目的とした性交渉まで8週間待つべし。そして、男性がジカ熱を発症した場合は、6か月待つべし。
④流行地帯から帰国した男女は、8週間はコンドームを使用した安全な性交渉に努めるべし。ジカ熱を発症した男性の場合は6か月間。
⑤ジカウイルス感染は、HIVや性行為感染症、予期せぬ妊娠を防ぐため、常にコンドームを用いるべし。
(2016年6月7日 WHOより出された勧告)

そしてもう1つのチクングニア熱は、まだ日本では、あまり知られていない感染症ですが、熱帯地域からの帰国者を中心に、いくつか感染例が報告されています。

チクングニア熱にかかると、皮膚の発疹、40度にも達する高熱、非常に強い関節痛が起こります。今のところ致死性は確認されていませんが、患者さんが非常につらい思いをすることになる感染症です。

オリンピックはいつも以上に警戒すべき

オリンピックは、最も暑い時期に開催されます。つまり、環境的には亜熱帯地方とあまり変わらないといっても過言ではありません。

『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

チクングニア熱も、やはり、2021年に向けて警戒が必要な感染症といえるでしょう。

以上のように、デング熱は過去に国内で感染拡大の例があり、ジカ熱もチクングニア熱も、感染拡大こそ起こっていないものの、すでに日本でも感染が確認されています。

ほかの感染症同様、蚊媒介感染症も他人事ではなく、日本でも感染拡大する可能性があると考えなくてはいけません。ましてや、世界中から人が集まるオリンピックでは、いつも以上に警戒してもしすぎることはないでしょう。

しかも、先ほど挙げた3つの蚊媒介感染症にはワクチンがありません(一部の国でデング熱ワクチンはあるものの、良い成績があげられていません)。私たち一人ひとりの意識と行動をもって予防するしかない、ということです。

佐藤 昭裕 KARADA内科クリニック院長、医学博士

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さとう あきひろ / Akihiro Sato

日本感染症学会専門医。日本内科学会認定医。前東京医科大学病院感染制御部副部長、感染症科医局長。
スッキリ等情報番組や、NewsPicks Weekly Ochiaiのコロナウィルス関係の回でコメンテーターをつとめる。東京都感染症マニュアル2018の作成に携わる。
2008年 東京医科大学 卒業 その後総合診療や長崎県五島列島での離島医療に携わり、 2013年東京医科大学病院 感染制御部・感染症科(渡航者医療センター 兼任)助教、2018年東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長 講師、2019年KARADA内科クリニック開設。感染症の専門的な知識を持ち、地域医療に携わる。スッキリ、NewsPicksなどメディア出演多数。

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