韓国は三等後進国?事故直後のソウルから 隣国の惨事のために、できること

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無責任な船長と、殉職した若い女性船員

私はこの事件が起きた朝、日本にいたわけだが、朝にヤフーのニュースで“韓国で船が沈没中”と出たときは、数時間前に事故が発生して船が沈没しつつあるという報道だったので、「船代がもったいないな~」くらいに楽観視していた。

別に天候も悪くない、周囲も明るい比較的浅い水域で、これだけゆっくり沈没しているのだから乗客は十分すぎるほど逃げる時間があるだろう、と。しかし、その数時間後、オフィスを出る際に携帯でニュースをチェックしたとき、信じられない思いとともに、怒りが沸々と込み上げてきた。

まだ大半が救助されておらず、船が沈没しているのに、沈没直前まで船内放送で「動かず室内に待機しろ」と流れ続けただって? 驚いたことに管制塔からは乗客を脱出させるよう船に命令があったのに、船員はそれに応じなかったという。これは船長が不在で指揮系統が混乱しており、よりによって船長が(自分自身を一般市民と偽って)真っ先に逃げ出して救助されたとのことである。

この信じられない船長の無責任さへのショックと同時に、若くして殉職した朴ジヨンさんの報道に胸を痛めた。朴さんは沈没の瞬間まで子供たちにライフジャケットを渡して避難を呼びかけ、子供に「お姉さんは逃げないの?」と聞かれて「子供たちを全員避難させてから、船員は最後に退避するのよ」と語り、最後まで乗客の避難に尽力して命を落とした。この朴さん(ちなみに弱冠21歳の、非正規社員)の責任ある勇敢な最後の姿は、救出された多くの人が異口同音に語っていたという。ほかにもキム先生、ナム先生が同様に最後まで子供の救助を優先して命を落とした。

このとき、私は東日本大震災の際に自身は避難をせず最後津波に飲まれるまで避難放送にあたっていた、南三陸町の遠藤未希さんを思い出した。こういう人間性が問われる最後の瞬間、使命感を持って最後まで他人の救助にあたり殉職するのは最前線の若い命で、真っ先に逃亡するのが、年老いた指導者の姿なのだろうか。これはともすれば、前線の若者だけ国の命令を信じて命を投げ出して、指導者だけは安全な場所に逃げていく数多くの戦争に共通する事態なのかもしれない。

本連載では一流と二流のビジネスパーソンの違いについて書きつづってきたが、最後の生死をかけた瞬間で自分を犠牲にして客の命を優先する、これほど尊い一流の働き方というより、人間としての高潔なあり方は、文章にすると陳腐すぎて申し訳ないくらい、私たちの心を打つ。

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