ドル円相場の先行きは円高なのか円安なのか ストックの円買いとフローの円売りの綱引き
日本の貿易収支で赤字が目立ち始めたのは最近1~2年の話である。ドル円相場が貿易収支に2年程度遅行すると仮定すれば、「需給面からはそもそも円高になりにくくなっている」という見方は成立しうる。ただ、金融危機以降は貿易収支とドル円相場の関係が明らかに薄くなっており、貿易収支による説明は絶対視できない。
国際収支全体で見ても円売りが優勢
また、貿易収支はあくまで国際収支の構成項目の一部でしかない。フローをより包括的に見るには他の構成項目も含めて仔細に見ることが必要になる。そこで、国際収支統計のうち為替相場に影響を与えそうな項目を積み上げ、基礎的需給バランスのイメージを示してみた。
2年連続で史上最小値幅を更新した2018~19年は基礎的需給バランスもほとんど均衡していた。これに対し、今年1~4月合計の基礎的需給はマイナス16兆円程度と大きな円売り超過が見られる。前年同期(2019年1~4月)はマイナス522億円、一昨年同期(2018年1~4月)はマイナス7.6兆円程度だったことを思えば、大きな変化といえる。背景には経常黒字が減少しているほか、海外から日本への対内証券投資が大幅な売り越しに転じていることもある。
もちろん、2~4月の3カ月間はコロナショックを受けた「悲観の極み」ともいえる局面であったので、こうした動きが常態化するとは考えにくいが、現時点では、上述の貿易収支と国際収支全般を勘案した基礎的需給バランスに照らして、円高を正当化しづらくなっているという事実は否めない。
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