「労災かくし」は重大な犯罪

第3回 事業者は4つの責任を自覚すべき

最悪の場合には経営難に陥ることも

軽視できないのが、「社会的責任」です。先の立川市で起こった労働災害では、新聞4紙に企業名が公表されました。また、江東区内で起こった転落事故については、書類送検された当日に、事件の概要がテレビのニュースで報道されています。

 このように、法に反して死亡災害などが発生した場合、新聞やテレビなどのマスコミで報じられることになります。とくに重大な災害ともなれば、会社は、マスコミを通じて、災害の状況、事故原因、再発防止に向けた対応策など、説明責任を果たさなければなりません。このときの対応如何によっては、今後の経営にも大きく響きます。

 コンプライアンス経営の重要性が叫ばれて久しい今日、法令違反が原因で労働災害を引き起こした会社に対し、社会からは厳しい目が向けられます。信用失墜の結果、最悪の場合には経営難に陥ることにもなるのです。

 労働災害が発生すると、被災した従業員やその遺族から、不法行為責任や安全配慮義務違反などで損害賠償を請求される「民事責任」の問題に直面します。労働災害については、いわゆる労災保険給付が行われます。しかし、精神的苦痛による慰謝料などは、労災保険給付にはありません。また、たとえば会社を休んだ場合には、特別支給金を含めて給与の約8割しか補償されないなど、労災保険給付ではすべての損害をカバーできるわけではありません。そのため、最近では、労災だけでは済まされない、すなわち、民事上の損害賠償を請求されるケースが増えています。とくに最近では、賠償額も高額化しており、会社は経済的損失を強いられることになります。

 そのほか、「行政責任」として、国や地方自治体の競争入札への参加が停止(指名停止)されるなど、労働災害は、経営の面においても、大きな影響を及ぼします。

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