パワハラで「全役員クビ」駅探vs株主の大バトル 委任状争奪戦は株主総会の前に事実上決着
これに対抗して、駅探は6月1日にCEHDの提案に対する反対意見を表明した。中村氏は東洋経済の取材に対して、「大量退職というが、その数字は過去の累計であり、多くの退職者が一度に固まって出てきたわけではない」として、大量退職という見方を否定した。パワハラがあったという指摘については、「パワハラを行った取締役が管掌している部署から大量の退職者が出たわけではなく、各部門から平均的に退職者が出ている」と反論した。
また、中村氏は、「幹部社員のほとんどが退職したという事実もなく、部長級ではこの5年間に5人ほど辞めたが、そのうち3人ほどは要求されるスペックと個人の能力がマッチせず退職した」としており、「課長級にしても、開発の部門のグループ長で辞めた人はいない。成長戦略に必要な課長級が辞めているということはなく、成長戦略が機能していないというのは、一方的な解釈だ」と言い切った。
さらに、「たかが31%の株主が」という発言については、「株主全体の価値を考えた場合に、30数%お持ちの株主のご意向だけで経営を決めるわけにはいかない」と話したものの、一部だけが切り取られたと憤慨した。
食い違う両者の主張
パワハラの疑いがあった取締役は5月21日から6月1日までの間に退任した。しかし、CEHDは3月13日の話し合いの際に中村氏が「経営陣として全体責任です」「これが事実なら私は善管注意義務違反になる」と発言したとして、CEHDは中村氏を含む全取締役が退任すべきだという姿勢を崩さない。
この点についても、中村氏は、「CEHDさんは、“その対象の取締役がこの場で辞任するなら不問に付す”とおっしゃられた。でも、調査もせずにある事業を管掌している取締役を退任させてよいはずがなく、私が“それこそ善管注意義務違反に当たる”と申し上げたことが、その言葉だけが切り抜かれた」と話した。両者の間には明らかに食い違いがある。
中村氏に衝撃を与えたのは、CEHDが提案する取締役の中に駅探の社員が3人いたことだった。その中には東芝時代に乗り換え案内システムを開発した者もいた。さらにこの3人とは別にCEHDが社長候補と考えている取締役候補者も東芝出身で、中村氏と一緒に仕事をしていた時期もある。気心の知れた人物だった。
「当社の社員の一部がCEHDの提案に乗っているのは非常に残念」と中村氏。「彼らとは長いつきあいだった」として、複雑な表情を隠さない。
ただ、「3人とも収益部門のマネジメントをしたことがない。成長戦略を示さず、経営に関与したことがない役員が入ってくると、企業価値を毀損するリスクがある」と懸念した。
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