パワハラで「全役員クビ」駅探vs株主の大バトル 委任状争奪戦は株主総会の前に事実上決着

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そこへポラリスに変わる筆頭株主として登場したのがCEHDだ。CEHDは出資だけでなく、駅探と共同でのビジネス展開も見据えていた。

とはいえ、乗り換え案内と医療ビジネスでは関連性が薄いように見える。東芝出身で2006年から駅探の社長を務めてきた中村太郎氏は、「ちょっと遠いなという意識はあった」と、6月18日に行われた東洋経済の取材で話している。

それでも駅探は、同社のコンシューマーサービスとCEHDの医療機関の顧客基盤を組み合わせた新サービスの構築を目指して共同での事業展開に乗り出した。しかし、「障壁が大きく、うまく軌道に乗せることができなかった」(中村氏)。

2017年にはCEHDの杉本惠昭社長が駅探の社外取締役を退任した。その頃から、駅探とCEHDとの間で考え方のずれが出ていたようだ。

「CEHDさんは、ちょうどその時期から当社と共同でビジネスを行うよりも、株の売却を検討されていたのではないか」と中村氏は振り返る。今年に入ってからもCEHDから「買い手が必要なら紹介する」というようなことを言われたと明かす。

取締役全員の交代を提案

そんな矢先、5月21日にCEHDが6月開催の駅探株主総会で取締役7人を選任するという株主提案を行うと発表した。駅探側も現経営陣を主軸とする7人の取締役の選任を提案している。つまり、CEHDの提案は現経営陣を退任させ、CEHDが選んだ新たな取締役に交代させるというものだ。取締役の一部を交代させる株主提案はときどきあるが、取締役全員の交代という提案はあまり例がない。

CEHDは同日、提案に至った経緯を詳細に説明している。それによれば、駅探の取締役によるパワーハラスメントにより、駅探社員の大量退職やメンタル不調者が発生するといった経営上の深刻な問題が生じたからだという。CEHDによれば、駅探の3月1日時点の社員数は90人だが2014年4月から2020年3月までの6年間で79人が退職したという。また、部門長クラスのほとんどが退職しており、「事業展開の遅滞と企業価値の減少を招いている」という。

パワハラ問題の解決に向け、駅探の中村氏とCEHDの杉本氏ら両者の経営陣は3月13日に話し合いの場を持った。 CEHDは事実関係調査のための第三者委員会の設置やパワハラを行った取締役の職務停止などを提案したが、駅探の取締役から「たかが31%の株主がそのようなことを要請するのはいかがなものか」と、株主を軽視する発言があったという。さらに、中村氏がその取締役をいさめることすらしなかったことも問題視する。

CEHDは、株主提案の目的は「大量の退職者やメンタル不調者の発生など、組織運営上の重大な問題を発生させ、またそれを看過し、かつ株主を軽視する現経営陣の変更」であり、それによって「駅探の企業価値向上を実現」したいとしている。

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