アメリカの警察「スタンガン」重用への疑問符

テーザー銃の死亡例多く犠牲者は黒人に偏る

この事件に関与した警察官6人(そのうち5人が黒人で1人が白人)は、過剰な暴力を振るったとして告発された。うち4人が免職処分となり、2人が処分取り消しを求めて市長・警察署長を訴えている。この2人の警察官の弁護士は、免職は政治的な動機に基づいたものだと確信していると述べている。

オークランド警察署でテーザー銃導入計画を担当した退役警官マイケル・レオネジオ氏は「警察が問うべきことは、『私はテーザー銃を使えるか』ではなく、『私はテーザー銃を使うべきか』だ」と語る。同氏はアクソンを相手取った不法死亡訴訟において専門家として証言を行っている。「テーザー銃は危険な武器だ」とレオネジオ氏は言う。「使用されることが増えれば、それだけ命を落とす人も増える」

アクソンは、自社が製造する武器について、リスクがゼロではないが、警棒やゴム弾などと比べても安全であると述べている。同社はロイターに送付したメールのなかで、「状況にかかわらず、命が失われることは悲劇だ。だからこそ私たちは、今も警官とコミュニティ双方を守るための技術開発と訓練に力を注いでいる」としている。

「尻に食らわせろ」

2017年7月、ある暑い日のことだった。ユーリ・マーティンさん(58)は水を飲みたいと思っていた。誕生日に12マイル(約19キロ)以上も歩いて親戚の家を訪れたマーティンさんは、ジョージア州中部にある人口約130人の街ディープステップで、ある家主に飲み水を求めた。相手は彼の願いを拒否し、追い払うために警察を呼んだ。地方検事によれば、マーティンさんは「黒人」と通報されている。

ワシントン郡の保安官代理が現場に到着し、道端を歩いていたマーティンさんに声をかけた。統合失調症の症状のあるマーティンさんは呼びかけを無視し、歩き続けた。保安官代理は応援を呼んだ。

地方検事によれば、保安官代理らは、マーティンさんが両手を後ろに回すよう求める指示を無視して「身構え」「拳を固めた」と供述したという。彼らの車両のダッシュボードに取り付けられたカメラの映像によれば、ある保安官代理が別の1人に向かって「尻に食らわせてやれ」と告げている。

保安官代理がテーザー銃を発射すると、マーティンさんは地面に倒れたが、腕に刺さったテーザー銃の電極針を抜き、徒歩で遠ざかった。3人目の保安官代理が到着し、自分のテーザー銃をマーティンさんの背中に向けて発射すると、彼は倒れた。

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