自分の顔を「絵でデコる」若者たちの密かな狙い インスタ「萎え」「映え」の後に来る新潮流

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4. vsco
vscoの事例(写真:筆者提供)

これは写真にフィルター加工ができるアプリで、このアプリ内でも加工した画像を投稿してシェアすることができる。最近の若者の間で「レトロブーム」があることから、フィルムカメラの人気が出ているが、高価であるためハードルが高い。しかしこのアプリなら、フィルムカメラで撮ったような写真に加工することができる。

カラフルな写真でもフィルターをかけることで、うるさい写真にならず、淡い雰囲気になる。

また、Instagramのプロフィール欄に「VSCO」のアカウントのURLを添付する人もいる。これにより、Instagramとは違った自身の世界観をアピールすることもできる。

まとめ

このように、ただシンプルなだけでも、カラフルなだけでもない、ほどよい「ガチャエモ」。最近の若者たちは、こうした写真を好み、SNSに投稿するようになっている。

シンプルなものはどうしても雰囲気が似てしまい、オリジナリティーが出せない。一方、フィルターなどをうまく使うことによって、派手な写真をほどほどにエモく加工することができる。アレンジがしやすく、ほかの人と被らない写真になるため、好まれているのではないだろうか。

原田の総評:「インスタ映え」の次なる形

学生たちのレポートはいかがでしたでしょうか。

初期のインスタ映えとは、「派手なモノ」を掲載することを意味していました。ところが、派手なインスタ映えが世に増えすぎ、「インスタ萎え」という言葉も生まれ、それに食傷気味になった若者たちは、ここ数年、「シンプルで洗練されたモノ」を掲載することを「インスタ映え」と再定義し、楽しむようになっていました。

しかし、シンプルなインスタ映えも増えすぎ、食傷気味になり、今、まさに生まれつつある新しい「インスタ映え」が、今回の原稿の「ガチャエモ」ということになるわけです。

そもそも「エモい」とは、英語の「emotional」からきた「感動した状態」を意味する若者言葉ですが、エモさを感じさせる商品は若者にとってはかなり前からあって目新しさがない。また、ガチャガチャしたモノだけだとあまりに幼なすぎる。ただし、この2つが組み合わさると、「新しいインスタ映え」にもなるし、自分たちにも新鮮に思えるというわけです。

こうした流れを踏まえ、今、この新しい「ガチャエモ」という流れが生まれてきたようです。若者向けの商品を開発する企業は、この「ガチャエモ」をマーケティング活動のヒントにしていくといいのではないかと思います。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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