小説家が明かす「一文が長すぎる文章」の問題点 「文書がクドい人」が知らないただ1つのコツ

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先ほどの例文は、「我々が提案するのは〜」というくだりから始まります。以降、文章が句点で一区切り付けられるまで、読者は、読んでいる間中ずっと「我々が提案するのは〜」という文言を、頭の中に置いておかなければなりません。ずっと備えておく必要があります。

一文中、つまり句点が置かれるまでは、「我々が提案するのは〜」という文言が、どこに係るか決定されないからです。

ほかの文言についても同様です。文が句点で区切られない以上、一度出てきた文言は、ほかの文言に係る可能性をずっと持ち続けます。なので、読者はそれをいつでも参照できるよう、頭のいちばん上の方に置いておかなければならない。

そして、文が長くなればなるほど、その置いておかなければならない文言が、どんどん積み上げられていきます。読んでいて疲れますし、最悪の場合、最初の方に出てきた文言を掘り出せなくなって、文章の意味が読みとれなくなります。

これが、一文が長い文章の、理解しにくさの正体です。読む側の脳に、高い負荷をかけてしまうわけですね。

なぜ理系は「一文が長い文章」を書くのか?

前節で挙げた例文は、わかりやすいように大げさに書きはしましたが、正直、あれくらいのものなら割とよく見ます。理系界隈において、そんなにめずらしいものではありません。

『理系のための文章教室』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

論文でも技術書でも、技術者のみで構成されるITベンチャーのコーポレートサイトでもよく見ます(筆者はIT企業で広報をやっている関係上、ちょくちょくそういったサイトに訪れる機会があります)。

または、スマホアプリのストア紹介文や、アプリ内説明文なんかでもありがちですね。開発者の方が書かれているんだろうな、なんて感じます。

なんならわたしも、デビュー当時、担当編集さんに「ここ、一文がちょっと長いです」と何度も指摘されました。苦い思い出で、ありがたいご指導でした。

一文が長い文章を、理系はかなり書きがちなのです。これはどうしてかというと、やはり、誤解しにくい文章を書こうという気持ちがあるからです。表現の不正確さを嫌っているのです。

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藍月 要 作家兼フリーランス広報

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あいづき かなめ / Kaname Aizuki

国立小山工業高等専門学校を卒業後、国立長岡技術科学大学に進学。教員免許を取得し、同大学大学院を中退。工業高校で講師として教科「情報」や「電子機械」などを担当する。エンタープレインえんため大賞にて最終選考に残り、2016年にファミ通文庫(KADOKAWA)より作家デビュー。その後、作家を続けながらIT企業の広報に転職。プレスリリースの作成やオウンドメディアの運営などを担当。独立し、現在に至る。その他、神職資格も所持。平成生まれ。

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