■エースコックのあつあつさん
1月25日新発売。エースコックの「生姜あんかけ風うどん」と「生姜とろみ醤油ラーメン」。
同社のニュースリリースをみると、世間で話題の“生姜”をテーマに、寒い季節にぴったりのホットな商品「あつあつさん」シリーズを開発しましたとある。
「世間で話題の生姜」というが、ここ数年間をかけて、「生姜ブーム」を巻き起こした仕掛け人といえば、本家は永谷園だ。以前このコラム上でも「永谷園生姜部が高めるブランド価値」と題して紹介したが、生姜のこだわり商品を生み出すために「生姜部」という専門部隊まで設立している力の入れようである。
その成果が「生姜の知恵シリーズ」。シリーズ名より、「『冷え知らず』さんの……」という商品名の方が認知度が高い。展開商品はカップスープを主軸に、即席スープ、ボトル缶飲料、グミ・飴・キャラメルといった菓子にまで展開している。しかし、その中の「ぞうすい」や「はるさめスープ」などは、モロにエースコックの新商品とかぶりそうだ。エースコックのほうがコンビニやスーパーの棚確保の力が勝っているため、「同質化」を仕掛けて、パイを奪い取る戦略に見える。さらに、「あつあつさん」のネーミングは明らかに「冷え知らずさん」を意識しているようにも感じられる。
危うし、「冷え知らずさん、逃げて~」……。と考えるのは早計。パッケージを見ると、いかにもエースコックらしいガッツリ系であることが確認できる。あんかけ、とろみという商品名がストレートにわかるシズル感のある写真だ。カロリー数は両商品とも300Kcal前後だという。
つまり、ターゲットが明らかに違うのだ。「冷え知らずさん」はスープをおにぎりなど一緒に食べたい人、主に女性狙い。「あつあつさん」はあくまでこのカップ麺をメインに食べる人向けだ。実は冷え性の男性も少なからず市場には存在しているが、「冷え知らずさん」はいかにも女性向けなので手が出しにくいという意見もある。そのニーズギャップを巧みにとらえたのがエースコックの「あつあつさん」だといえるだろう。
フェニックスとエースコックの例を見てきたが、チャレンジャーは、リーダーの10倍、知恵を絞っている。似たような商品が上市されているとき、単なる「模倣商品」と見てしまうのではなく、どんな知恵を絞った成果の商品なのか考えてみるのも勉強になるはずだ。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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