アパレル苦境下で200%伸びたブランドの正体 「広告宣伝しない」「セールもしない」で成長

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foufouの服は、「万人が好むもの」とは少し異なる。

例えば、Aラインのシルエットを重視したスカート。なんと5mものデニム生地を使用しており、腰にズドンと重みを感じるほどだ。日常生活では、とても着づらい。

即完売した個性的なスカート(写真提供:foufou)

しかしこのスカート、予約販売含めて即完売している。インスタグラムやTwitterでは、裾をひるがえしてくるくる回る動画をアップするファンも多く、熱量はどんどん増しているのだ。

同社の服はすべて国内生産で、布をふんだんに使った商品が多い。そのため原価率は50%を超える。20〜30%に抑えるブランドが多い中で、極めて異常な数値と断言できる。

ところが、独特のビジネスモデルでこの原価率の重さをカバーしている。

広告宣伝費ゼロ、セールはしない、販路は広げない

foufouの戦略は「広告宣伝費はゼロ円」「セールは一切しない」「販路を拡大しない」。どれも、業界の常識を覆す内容だ。

代表兼デザイナーのマール・コウサカ氏(写真提供:foufou)

「ブランド認知だけを広げても、本当のファンの獲得にはつながらない」

という考えから、ブランド立ち上げ以来、広告出稿をしたことは1度もない。

新作はすぐに完売するが、たとえ在庫が売れ残っても、セールもしない。「定価でも購入してくれる、熱量の高い顧客を大切にするため」だという。

現在、同社の販路は自社ECのみで出店コストはないが、ブランドの知名度が高まるなか、「販路拡大で一気に業績拡大を」「広告出稿を」と欲が出そうなものだ。ところが、同社はそうはしない。そこには明快な理由がある。

アパレルの業績に大きく影響するのは、在庫だ。予想外に売れたり、売れなかったりして、在庫が大きく変動することは収益面へのリスク要因となる。そうした「想定外」を避けるため、認知や販路をやたらと広げようとはしないのだ。マール氏は、会社員時代にアパレル企業で生産管理を担当していた。当時の経験から、ばくちを打つことはしないポリシーなのだという。

「自社アカウントなら、フォロワー数から売り上げ予測も立てやすいんです。こちらから見えないところで商品がバズってしまうのが、実はいちばん怖い。広告でブーストをかけるのではなく、毎月じわじわとプロパーの売り上げを伸ばしていくほうがいい」(マール氏)

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