「理系は文章がヘタ」と思う文系人間の勘違い “正確すぎる文章"は時に社会の反発を招く

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そして、正確さとは別のところで、それはそれで正しいのです。人間が完璧に、正確無比に動いたり判断したりできない以上、適度な妥協や許容がなければ、世の中は動きません。だから、正確さの徹底が、たとえ科学的な態度としては真っ当でも、その場において求められる人間的な正義や都合にはそぐわない――そんなことが世では往々にしてあるのです。

……書いていて、嫌な汗が出てきますね! 苦い記憶がフラッシュバックする。

理系として生きていると、「より正しいことを言っているのになんで受け入れてもらえないんだろ?」と頭を悩ませること、たびたびありませんか……? わたしにはあります。

その場で見えている事実を言っただけのつもりが、「どうしてそんな冷たいことを言うんだ」と悲しまれてしまったり、なるべく正確なことを確認したかっただけのつもりが、「お前には情緒がない」と呆れられてしまったり……。

「正確=正しい」わけではない?

理系(われわれ)はついつい、正確であることを、イコールで正しいことだと考えてしまいます。ゆえに、より正確であることは、より正しいことだとも思ってしまう。

それが間違っていると言いたくはありませんが、それを求めていない場、あるいは人や文化というものがあるのです。

もし理系がこの世の中で大多数を占めていたのなら、こんなことで悩む必要はあまりなかったでしょう。しかし悲しいかな、先に述べたとおり、日本社会はそうなっていない。

学問の中で学んできた態度や倫理と、実社会の多くの場面で求められるふるまいが一致していないことは、理系にとって、悲しくもわかっておかなければならない現実です。だから我々は、ちょっとだけ生きにくかったりするのです。

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