日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける この国の将来を決める「新monopsony論」とは

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新古典派の経済理論は、労働市場は完全競争であると仮定しています。「完全競争」にはさまざまな意味があるのですが、たとえばあらゆる情報が労使双方に共有されていて、労働者は少しでも条件がいい雇用先があれば、即座にコストゼロで転職できるような状況を指します。

このような状況では、各企業の賃金は完全に横並びとなります。要は、企業と労働者は「完全に対等」だと考えられていたのです。

この仮定のもとでは、賃金は需給によって決まるので、最低賃金を引き上げるとその分だけ雇用が減ります。日本で「最低賃金を引き上げると、失業者が増える」と広く信じられているのは、どこかでこの理論を聞きかじった人が多いからでしょう。

しかし、この理論をそのまま現実に当てはめられないのは明らかです。労働市場で完全競争が成立しているならば、私が社長を務めている小西美術工藝社で、全社員の給料を1円でも下げるとただちに全員が辞めて、他社に転職してしまうはずです。しかし、そんなことは起こるはずありません。

「モノプソニー」の存在は実証的に測定可能

最近の分析では、「モノプソニー」の存在を実証的に測定しています。ここでは細かい説明は省きますが、賃金が1%変動したときに労働供給が何%変動するかを示す「労働供給の賃金弾力性」を測ることで、「モノプソニー」の存在と強さを確認できます。

「労働供給の賃金弾力性」が0に近くなればなるほどその業種の「モノプソニー」は強く、大きくなるほど弱いとされています。近年、ビッグデータを活用することで、さまざまな国のさまざまな業種で「モノプソニー」の力が働いていることが明らかになっています。

次ページ企業は当然、立場の弱い労働者の「足元を見る」
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