「コロナ」に「人種暴動」沈没するアメリカの元凶 分裂を防ぐのではなくあおるトランプの存在
このツイートについて後に質問を受けたトランプは、支持者に暴力をたき付ける狙いがあったのではないか、との疑惑を否定した。「彼ら(支持者)はアフリカ系アメリカ人を愛している。彼らは黒人を愛している。MAGAは黒人を愛している」とトランプは言った。
ワシントンのミュリエル・バウザー市長は30日午前に素早く反応し、市警察は大統領も含むワシントン市内の全員を守ると述べた。市警察は同日夜までにホワイトハウス周辺に出動した。
しかしバウザー市長は、大統領を分裂の源と呼んで、こうツイートしてもいる。「彼はおびえて孤独にフェンスの後ろに隠れている。私は#GeorgeFloyd(ジョージ・フロイド)の殺害や、数百年と続く制度的な人種差別に抗議して合衆国憲法修正第1条で保障された権利を平和的に行使する人々を支持する」「凶暴な犬や恐ろしい武器なんてない。そこには、びくついた1人の男がいるだけだ。おびえて、孤独な……」。
トランプの指導者としての流儀
午前中に批判を連発したトランプは、この日しばらくして微妙に口調を変えた。スペースXの宇宙船打ち上げ後にケネディ宇宙センターで行った演説の冒頭で暴動に触れたのには、明らかに好戦的な印象を和らげる狙いがあった。
「人々が感じている痛みは理解している」とトランプは述べた。「われわれは平和的な抗議活動の権利を支持し、その声に耳を傾ける。しかし今、街中で目にしているのは、正義や平和とは関係ない。ジョージ・フロイドに対する追悼の思いは、暴徒や略奪者、アナキスト(無政府主義者)らによって汚されている」。
この混乱の日々でくっきりと浮かび上がったのは、トランプの指導者としての流儀だ。
大統領就任当初からトランプは和解ではなく対立を求めてきた。平和ではなく、戦いを求める人物として自らの存在感をアピールしてきたのである。これを好意的に受け止めている国民は大勢いる。エリート層との対決すらいとわない頼もしい大統領、というイメージのおかげだ。
しかし、新型コロナによる保健衛生と経済の危機に加えて、新たに人種危機が重なったことで「トランプ流」は試練に立たされている。大統領選挙を何カ月後かに控えた段階で足元が揺らぎ、世論調査でも出遅れている。