「コロナ」に「人種暴動」沈没するアメリカの元凶 分裂を防ぐのではなくあおるトランプの存在
混乱はトランプの足元まで迫ってきた。ホワイトハウス近くには連日、何百人という人々が押し寄せ、フロイドの死と大統領の対応に向けた抗議デモが続いている。多くは「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命だって大切だ)」や「平和なくして正義なし」のスローガンを連呼する平和的なものだ。
しかし、中にはトランプを罵倒する言葉をスプレーで落書きしたり、小さな花火に火を付けたり、爆竹を鳴らしたり、シークレットサービス(大統領警護隊)や公園警察の隊員に向けてレンガやペットボトル、果物を投げつける者もいて、当局は催涙弾などで対抗している。
デモ隊をあざけることで頭がいっぱい
迷彩服をまとった州兵が付近のラファイエット公園を行進し、警察はホワイトハウス周辺の数ブロックを封鎖した。1人の男性が通りを闊歩しながら「革命の時だ!」と叫んでいた。ヘルメットと戦闘服を身につけた警察がプラスチック製の盾を手にホワイトハウスを取り囲む光景によって、アメリカが分裂状態にあるとの感覚は一層強まった。
トランプはシークレットサービスを「非常に素晴らしい」「さすがプロだ」とほめたたえたが、首都ワシントンの市長(民主党所属)については、市の警察を応援によこさなかったと激しく非難した。市長は、そのような事実はないと嫌疑を否定している。
州知事や市長らが自制を促す一方、トランプはデモ隊がホワイトハウスの敷地に侵入したら、どんな暴力にさらされていたかを誇らしげに語っている。デモ隊をあざけることで頭がいっぱいのようだ。
トランプは5月30日午前、こんなツイートをした。「専門的に組織された大群衆だ。だが誰もフェンスを押し破ることすらできなかった。押し破っていたとしたら、私がこれまでに目にした中で最も凶暴な犬たち、そして最もおそろしい武器に遭遇することになっただろう。控え目に言っても、深刻な傷を負っていたはずだ。大勢のシークレットサービスが待ち構えていたのだからな」。
この日、支持者にホワイトハウスに集結するようほのめかしたトランプのツイートは、まさにホワイトハウスの目と鼻の先で衝突が起こる可能性を予見させた。「私の理解では、今夜は『ホワイトハウスでMAGAナイト』ってことになるかな???」 「MAGA」とはもちろん、同氏が初めての大統領選挙で用いたスローガン「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」の頭文字を並べた略語だ。