「コロナ」に「人種暴動」沈没するアメリカの元凶

分裂を防ぐのではなくあおるトランプの存在

「大統領は国が直面している困難な現実からこれまで以上に目をそらし、距離をとっているように見える」とトランプに批判的なフロリダ州の元共和党下院議員、カルロス・カーベロは語る。「アメリカが何よりも癒しを必要としている時に、大統領は敵視する人々との間の個人的で些細な戦いに没頭している」。

もちろん、現在アメリカが経験していることは、どんな大統領にとっても困難な状況には違いない。今年はすでに1998年の弾劾決議、1918年の致死性パンデミック、1929年の大恐慌をすべて組み合わせたような国家的トラウマの年となっていたが、今度はそこに1968年の深刻な社会不安が加わったのだから(編集部注:1968年にはキング牧師が暗殺され、アメリカ中に暴動が広がった)。

2020年は国と国民を覆う苦しみが蓄積した結果、アメリカ社会の土台が崩れた年だ、といっても言い過ぎではあるまい。そしてトランプは、国家の分裂を修復する存在ではなく、分裂を象徴する存在となったのだ。

「略奪が始まれば、銃撃が始まる」

ミネアポリスの暴動は、息ができないと叫ぶフロイドの首を警察官が9分近くにわたって膝で押さえつけて死亡させた事件が発端となった。この警察官はその後、殺人罪で起訴されている。

暴動に対するトランプの最初の反応には、国家的な課題に対する同氏の最も本能的な反応がはっきりと現れていた。「略奪が始まれば、銃撃が始まる」。同氏がこうツイートし、軍隊を送ると脅したのは5月29日朝のことだった。

その13時間後、批判が殺到すると、トランプは発言を修正するために新たなツイートを投稿した。「略奪が起きると(一般の人々による)銃撃につながる」と言いたかっただけだ、というのだ。

「私はこのようなことが起きて欲しくないし、昨夜の表現が意味しているのはそういうことだ」と彼は語ったが、トランプに批判的な人々は、このような言い換えに納得していない。

次ページトランプの味方ですら苦言を呈し始めた
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 最新の週刊東洋経済
  • 近代日本を創造したリアリスト 大久保利通の正体
  • 賃金・生涯給料ランキング
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ウエルシアがイオンと挑む「ドラッグストア飽和」打破の勝算
ウエルシアがイオンと挑む「ドラッグストア飽和」打破の勝算
東芝、会社「3分割」に残る懸念
東芝、会社「3分割」に残る懸念
約10年で3000店が消滅、「町の本屋」の切実事情
約10年で3000店が消滅、「町の本屋」の切実事情
企業同士の取引で「値上げラッシュ」が起きている
企業同士の取引で「値上げラッシュ」が起きている
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「非財務」で生きる会社、死ぬ<br>会社 企業価値の新常識

今や株価を決める最大の要因は「非財務情報」というのが世界の常識に。優れた開示を行えば企業価値の向上につながる一方で、開示が不十分だと株を売られるリスクも。企業価値の新常識をめぐる混乱とその対処法に迫りました。

東洋経済education×ICT