ポルシェ911の後部座席に大男は乗れるのか? 車検証に「定員4名」と確かに書いているけども
空港からゾルダー・サーキットまでは小一時間ほどだったと思うが、小川さんが気になってけっこう長く感じたものだ。
サーキットに着いて後席の感想を聞くと、「いや、思ったよりきつくなかったですよ。大丈夫です。ご心配なく」と笑顔で返されてホッとしたことを覚えている。
911の後席は小さな子どもか身の回りの荷物専用と思っていたが、少なくとも、大人3人までなら「けっこう使える」ことがわかった。
2度目の大人3人乗りは1999年のこと。このとき、僕は直接立ち会ってはいない。立ち会ったのは家内だ。
前にも書いたが、ミュンヘン近郊で開かれた996前期型GT3の試乗会が終了した夜、僕が急病で倒れ、緊急入院したときのことである。
クルマだけじゃなく、人もカッコいい
持病の喘息で発作を起こし(身動きできないほどの激しい発作は初めての経験だった)救急車騒ぎになってしまったのだが、病院に着いたら、安心したせいか、発作症状は急速に収まっていった。
だから、僕はすぐ帰国したい旨を医師に伝えたが、許されなかった。「しっかり検査をしてから答えを出します」。「順調なら、退院は4日後くらいだと思います」と言われた。
その夜、家内に電話した。ことの次第は、すでにポルシェ広報から詳細な連絡が行っていたので、家内は落ち着いていた。で、「明日の朝の飛行機で行くからね」と。
「もう大丈夫だし、4日だけだから来なくてもいいよ」と言ったのだが、「絶対に行くわ!」と譲らない。
入院していたのは、ミュンヘンから南東に40kmほど。ランツフートという小さな町にある大学病院だったが、とてもいい雰囲気の町だった。
試乗会で僕が泊まっていた部屋を、ポルシェがそのまま押さえてくれていたので、家内もそこに泊まれるようお願いした。
家族経営の小さなホテルで、おいしい食事(家庭料理風)と、暖かなホスピタリティは普通のホテルでは味わえない心地よいもの。
そして、オーナーの娘さんが家内の面倒を見てくれるということで、安心感も倍増。ポルシェの細やかな心遣いに感謝感謝だった。
ポルシェは家内をミュンヘン空港まで迎えに行ってもくれた。本社広報のSさんと、試乗会に同行していたポルシェ・ジャパン広報のAさんのふたりで。
この独日の広報スタッフ、「いい男コンテスト」でもあれば、どちらも優勝間違いなしといえるほどカッコいい。もちろん背も高い。
そんなふたりに迎えられたのだから、家内も嬉しかっただろう。「ポルシェって、クルマだけじゃなくて、人もカッコいいのね!」とは家内の言葉だ。