宣言解除でも安倍首相への不信感が消えない訳 内閣支持率急落、安倍チルドレンから批判も

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しかし、「会期延長なし」となれば、閉幕後は河井夫妻逮捕へのハードルは低くなる。与党内には「河井問題はいつまでも引きずれない」との見方が多く、逮捕が河井夫妻の議員辞職につながれば、「公判中を理由に説明責任は回避でき、政治的には一件落着となる」(自民幹部)との声も広がる。

もちろん、安倍首相や菅義偉官房長官が河井陣営の選挙活動に異例の肩入れをし、しかも党本部から1億5000万円という「考えられない選挙資金」(自民選対)が投入されたことで、司令塔である安倍首相や二階俊博幹事長の責任は免れず、すでに党本部の捜査も始まったとされる。しかし、検察が自民党の現職議員の捜査に突き進めば、「政権と法務検察の癒着という批判が払拭され、黒川氏問題での国民的批判をかわすきっかけにもなる」(自民幹部)との見方もある。

6月末サミットで支持率回復の思惑

政府は5月27日に宣言解除とセットになる第2次補正予算案を閣議決定した。6月8日にも国会提出し、会期内の成立は確実とみられる。

安倍首相は「世界最大の対策」と胸を張り、首相サイドは「これでコロナ対策は一区切り」と語る。これまで8回を数えた首相の「コロナ会見」も5月25日で「とりあえず打ち止め」(政府筋)となった。冒頭スピーチの棒読み、次の日程を理由とした質疑打ち切りなどで、回を追うごとに不評は拡大したが、緊急事態でもない限り、次の首相会見は6月17日の国会閉幕後の会見までない見通しだ。

国会閉幕直後には都知事選が告示され、「政治的な目先も変わる」(自民若手)。さらに、トランプ大統領が検討する6月下旬のサミットに安倍首相が出席すれば、「外交の安倍」をアピールし、支持率回復につながる可能性もある。各国首脳に先立って参加の準備を進める首相サイドの動きも、その思惑を裏付ける。

しかし、宣言解除後も第2波襲来への不安は消えない。首相サイドは「小さな波はあっても、感染爆発の可能性は少ない」と楽観的だが、各国の例を見ても「(感染爆発しないという)保証はまったくない」(専門家)。経済的にはアベノミクスは完全に破綻し、2021年夏の東京五輪中止説も勢いを増している。

事実上、解散権も封じられた安倍首相にとって、「もはや求心力維持は、国民の協力次第」(自民長老)というのが現実だ。このため与党内では「小細工などせずに、不器用でもいいから誠心誠意、コロナ対策に没頭することしか延命の道はない」(同)との厳しい声も広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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