日産「ルークス」実際に乗って感じた期待と欠点 随所に見えたライバル研究の痕跡と作り込み

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走りはどうか。今回、試乗したのはターボエンジンを積む「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」の2WDモデル。走り始めてすぐに気がつくのは、安定感と落ち着きだ。

トレッドが狭く、ホイールベースが短いわりに重心が高いスーパーハイトワゴンの動的性能は、物理特性として不利で、各社ともその走行感覚のレベルアップには苦労している。

片方の駆動輪が空転した場合に反対の駆動輪にブレーキをかけて駆動力を確保するブレーキLSD機能を搭載する(筆者撮影)

しかし、交差点を曲がる際などの安定感や落ち着きは、そんな不利な要素を感じさせないほどで、車体構造からサスペンションの味付けまでしっかりと作られていることが伝わってくる。旋回時のグラッと不安な挙動も、しっかり押さえ込まれていた。

高速道路に入り速度を上げると、車体の上下動が気になるシーンもあったが、ライバルに劣るかといえばそうは思えない。

プロパイロットは、わずか1年前にデビューしたデイズよりも制御が高度化していたことを実感した。下り坂での速度維持、前方車両との車間が詰まった際の減速制御の自然さ、車線維持機能のスムーズなステアリング制御など、一層滑らかで使いやすい自然な制御となっていたのだ。

追い越し前は、ウインカー操作に連動して車間を若干詰めて追い越しをサポートするなど、ドライバーの違和感を減らしていたのも印象的だった。

リヤシートに乗って感じたのは、音が静かなこと。騒音が大きくなりがちな高速道路走行中でも、声のボリュームを上げることなく自然に会話できることには驚いた。

今回の試乗車がエンジン回転数を抑えられるターボエンジンだったこともあるが、日産によると「デイズに比べて遮音や吸音などの対策をしている」という。

緊急事態宣言が解除されたこれからが勝負

新型ルークスは、果たして販売面でもライバルを超える存在になれるだろうか。

日産によると、発売から約1カ月(2020年4月末時点)での受注台数は3万台弱。好調なスタートを切ったと言える。しかし、4月の販売台数は王者N-BOXをはじめとするライバル“3強”よりも、低い水準にとどまった。

とはいえ、これはコロナ禍の影響を受けた結果のため、現時点で多いのか少ないかを判断するのは難しい。緊急事態宣言や外出自粛でペースが落ちていた経済活動が再開されてから、本当の勝負が始まるといえるだろう。

工藤 貴宏 自動車ライター

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くどう たかひろ / Takahiro Kudo

1976年長野県生まれ。大学在学中の自動車雑誌編集部アルバイトを経て、1998年に月刊新車誌の編集部員へ。その後、編集プロダクションや電機メーカー勤務を経て、2005年からフリーランスの自動車ライターとして独立。新車紹介を中心に使い勝手やバイヤーズガイド、国内外のモーターショー取材など広く雑誌やWEBに寄稿する。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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