荒川俊治 エス・バイ・エル社長--この会社の立て直しは俺しかできない
もちろん社員の声をただ鵜呑みにしているわけではありません。正月明けの7、8日に私が講師で東日本、西日本の営業マンを丸一日、東京と大阪で直接教育します。工場の利益を減らしてでも、売れる価格帯に商品の売り値を下げたりして、商品の付加価値・魅力を上げて、営業力の強化をしたときに、500人で3000棟というのが目標です。
100人営業マンがいたとして、つねに50人以上が契約していないとダメです。一棟も売れない人が多数派のような組織では緊張感もないし、向上心もありません。つねに50%以上の人が売っている組織では、売らない人が緊張感を持つことになります。私は赤字の支店を日本一の支店にしたりするプロセスの中で、そういうことを肌で感じています。組織の長の能力も大事ですが、こういう仕組みや会社の組織を作ることのほうが売るためには重要になります。先程言った支店の大型化の狙いも同じです。実績を上げる営業マンがいて、その人が残りの人に刺激を与えるには、最低でも1支店で30人から50人は必要です。いま一番小さい支店は営業マンが5人しかいません。これでは競争原理が働きません。経費もかかります。
支店に裁量権限が与えられていないのも問題です。支店で決断、判定ができるようにすれば、本社そのものが小さくて済むし、スピーディーに対応できます。支店で本社にお伺いをたてて、本社に稟議書を上げてとかね、こういうことを今はやっているんですよ。ひとつの改革が二つも三つも意味を持っています。
--改革の成果は早くから出てきますか。
4月に組織・人事改革をすると言いましたが、そこまで空洞期間をつくることはできません。そのため11月からは大キャンペーンを始めています。社を挙げての全社員紹介キャンペーンに加え、営業マンにはインセンティブを与えるようにしました。来年3月までは非常事態と捉えています。この12月から来年3月までの受注が来期に大きく響きますし、隙間を作るわけに行きません。
ビルダー的機敏さ取り入れれば3000棟シェア1%は可能
--エスバイエルの規模は改革するのにはやりやすい?
年間販売1万戸以上のメーカーが縮小市場で販売を伸ばすのは難しい、と思います。一方で戸建てを30万戸とすると3000戸、1%のシェアを取るための商品戦略と販売戦略は割と簡単だ、と私は社員に言っています。個人住宅を建てる100人に1人が魅力と感じる商品を作れば1%のシェアは取れる。この商品戦略に加えて、さらに1%のシェアを取るための販売戦略と営業マンの強化をすれば、間違いなく1%はできます。これが2%、3%、1万戸、2万戸、3万戸に増えるにつれて、難しくなっていきます。エス・バイ・エルのような規模ならば、1200戸から3000戸にしていくのもかなりやりやすいと思います。