「濃厚接触」を検出するアプリを使うべき理由 アップルとグーグルが「すれ違い」を記録する

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前述の通り、この取り組みは、アップルとグーグルが共通の接触記録を残すための「アプリを作れる仕組み」を作ったにすぎず、両社が積極的に情報を収集するわけでも、全世界で利用できるアプリを用意するわけでもない。アプリを作るのはあくまで、各国や各地域の政府や衛生当局だ。

例えばインドやイスラエルは、位置情報を用いて衛生当局が接触を確認する仕組みを採用しており、アップル・グーグルの仕組みは利用しない。ユーザーの位置情報を直接利用し、感染者との接触を認定するため、プライバシー上の懸念がある。

またシンガポールやオーストラリアでは、電話番号など、連絡がつく形で個人を特定した接触情報を、衛生当局が収集する仕組みを取っている。イギリス、フランスは匿名ながら、やはり衛生当局が情報収集を行う中央管理型のシステムを念頭に開発している。

日本の政府IT総合戦略室が検討中

一方アップル・グーグルの仕組みは、個人を特定しない匿名型かつ、衛生当局が接触情報すべてを収集しない分散型を実現しており、プライバシー、セキュリティーの懸念が最も少ない方法であることがわかる。

この仕組みの純粋な活用をいち早く検討していたのが、日本の政府IT総合戦略室だ。ゴールデンウィーク中に各国の衛生当局向けに提供が開始されたアップル・グーグルのAPIに対して、連休明けにはアプリの開発案を出しており、実装が進んでいくことが期待できる。

なお接触検出APIの活用は、各国の衛生当局が公開するアプリに限られることから、日本ではアプリの公開母体は厚生労働省になるだろう。

この接触検出アプリは、必ずしも完璧な物ではない。

例えば、iPhoneと接続したAirPodsで音楽を聴きながら、iPhoneを置きっぱなしで部屋を離れても、すぐには音楽が途切れないように、Bluetoothでも隣の部屋ぐらいなら電波が到達するため、よりリスクが少ないにもかかわらず、鍵を交換してしまうことが考えられる。

また任意でアプリをダウンロードした人が参加する方式であるため、アプリが普及するまで有効性を発揮できない問題点がある。

アプリを公開してからは、アプリ活用のメリット、すなわち感染者との接触をいち早く察知して対処できる点をアピールし、自分や周囲の人の健康を守る行動であることを啓蒙する必要がある。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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