新幹線10年目の青森、ねぶた中止で試練の夏 暖冬とコロナが影、危機の1年どう乗り切るか

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青森県は2017年、外国人宿泊者の前年比伸び率が全国一を記録した。もともとの入込数が少なかった事情もあったとはいえ、例えば青森市が陸奥湾に面している地の利を生かし、市中心部近くにクルーズ船が乗り入れられる青森港新中央埠頭を整備するなど、懸命の施策が実を結んだ形だった。

完成直後のCIQ施設で「クイーン・エリザベス」を歓迎する青森西高校生ら=2019年5月、青森港新中央埠頭(筆者撮影)

2019年4月には同埠頭に、CIQ(税関・出入国管理・検疫)に対応できるクルーズ船専用ターミナルが稼働し、巨大な客船が寄港するたび、まち全体に華やいだ空気が漂った。各地で問題化していたオーバーツーリズムよりずっと手前の、平和な段階だった。あの「ダイヤモンド・プリンセス」も、市民にはおなじみの1隻だった。

筆者が取材してきた県立青森西高校「おもてなし隊」の生徒たちもシーズン中、クルーズ船客の接遇に奔走し、2019年度の「青森県おもてなしアワード」で最高賞の知事賞を受賞した。この新中央埠頭に、歓声と笑顔が戻るのはいつだろう。

物流の拠点にコロナ影響

青函連絡船がなくなった後も、青森港が物流の拠点であることに変わりはなかった。2016年3月の北海道新幹線開業後は、割高な新幹線料金を忌避して青函航路のフェリーに利用者がシフトし、結果的に、フェリーの復権をもたらした(2017年3月12日付記事「『新幹線は高い』青函間にフェリー復権の兆し」参照)。

そのフェリー航路にも、新型コロナウイルスは濃い影を投げかけている。青函フェリー青森支店によると、4月の輸送量は、前年比で7割強の減少という。

青森港のフェリー埠頭で青函フェリーから下船するトラック(筆者撮影)

青函航路は、新型コロナウイルス以前から、懸念すべき環境に囲まれていた。2018年6月、本州―北海道の物流に参入した宮古(岩手県)―室蘭(北海道)のフェリー航路は、利用が伸び悩み、2020年3月末で運航を休止した。

この航路は、2018年10月から、南下便が八戸に寄港するルートに変更されていたが、2020年4月以降は八戸―室蘭航路に移行し、青函航路の強力なライバルになると目されていた。一方、JR貨物は2022年5月の完成を目指し、北海道内最大級の物流施設を札幌市内に建設中だ。しかし今、これらの競合相手も含め、国内の経済、社会環境にどれほどの激震が襲いつつあるのか、今はまだ全容が見えない。

次ページ市民の模索が続く
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