増資ラッシュを担う大手証券の功罪、資本市場の地盤沈下を助長する懸念

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 業界幹部は「今年は大型案件が多い。海外を含めた販売力で国内勢では評価が断トツの野村の強みが発揮しやすい」と解説する。また、「企業側も生き残りを懸けた資金調達で、確実に成功させるとなれば野村に頼らざるをえない」。つまり2位以下との実力差は歴然。「大和が合弁を解消せず、三井住友・大和・日興の大連合が実現していれば、野村の相当な競合相手になったはずだが……」(外資系幹部)との見方は多い。

大和は企業カルチャーを維持し、経営の主導権を守るため、独立路線を選んだ。今年4~9月には、三井住友の巨額増資の主幹事となり、関与額シェアで野村を逆転したが、10月以降のシェアは再び低下した。

だが、失うばかりではない。11月に三井住友を主取引行とするNECの主幹事を確保。独立に伴う顧客離散の懸念を払拭した。大和幹部は「われわれの顧客には、旧住友銀行メイン、大和主幹事という発行体が多いが、合弁解消後も主幹事先はほとんど残ると思う。レート(手数料)次第でドライに主幹事が変わる社債と違い、株の主幹事はそう激変するものではない。三井住友銀行と提携しても、三井系の有力企業で主幹事になれたところはゼロ。ほとんど野村で変わらなかった」と話す。

社債市場では10月以降、三井住友がメイン行の大手企業の主幹事を日興が獲得。傘下に入った効果を享受し、シェアを大幅アップしている。

ただし、企業の長期的な資本政策に直結する株式の発行市場は、社債と別物。手数料も社債が発行額の0・3%程度に対し、株は4%前後とケタ違い。株の主幹事を取れるかどうかが引受証券会社の価値を大きく左右する。重要視される株においては「日興が主幹事の企業は今後、草刈り場になる」と話す業界関係者が少なくない。同社はもともと、三菱系企業との関係が深いが、三井住友の傘に入ったことで日興離れが進むとの見方だ。また、日興は旧日興シティの引受部門を吸収したが、法人・海外向けのセールス部門がシティグループ証券に残ったまま。自前で態勢強化を図るものの「販売力あっての引受業務」だけに、発行体の信頼を得るには時間を要するだろう。

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