検察官定年延長法案、ネットで「大炎上」の理由 ツイッターで拡散、広がる法案反対への賛同

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この問題は、政府が1月末に定年による退任が確実視されていた黒川氏の定年延長を閣議決定したことが発端だ。今回の検察庁法改正案の施行は2022年4月からで、黒川氏の定年問題と直接関係するわけではない。しかし、「脱法行為」と批判された黒川氏の定年延長を「政治的、法的に事後追認させる狙いがある」(法曹関係者)との指摘もある。

しかも、法案には同時に、内閣や法相の判断で個別に検察官の定年を延長できる規定が新たに盛り込まれている。だからこそ主要野党や一部マスコミが「検察の独立性を侵す」と批判するわけで、これまでのところ、安倍首相や法相が「なぜ今、法改正する必要があるのかをまったく説明できていない」(同)のが実態だ。

公明や維新からは不安の声も

安倍首相は、黒川氏の定年延長閣議決定後に、これまでの政府見解との違いを指摘されると、突然「法解釈を変更した」と発言。これを受けて、法務省や人事院などが「慌ててつじつま合わせに走る」(立憲民主幹部)というドタバタ劇もあった。しかも、検察内部からも「検察への国民の不信を招く」(有力検事正)などの意見が出るなど、現場からの反発も目立った。

自民党は今のところ、安倍首相の意向も踏まえ、「なんとしてでも今国会で成立させる」(自民国対)としており、結果的に会期内成立の可能性は高いとみられている。ただ、公明党や維新には「強行採決に協力して、自民批判の巻き添えになるのはごめんだ」(維新幹部)との不安も出始めている。

しかも、自民党は公選法違反での検察捜査が続いている河井克行前法相と夫人の案里参院議員という火種も抱えている。逮捕された政策秘書らの裁判が進み、「捜査の進展次第では近い将来、河井夫妻の逮捕の可能性もある」(司法関係者)とされる。ただ、「議員逮捕は検察首脳の決断次第」(同)なのも事実で、だからこそ「官邸の守護神」と評される黒川氏の動向が注目されている。

そこで、政権批判の回避策として政界でささやかれ始めたのが「首相は黒川検事総長を断念せざるをえないのでは」(閣僚経験者)との見方だ。稲田伸夫・現検事総長が65歳の定年に達するのは2021年8月14日。稲田氏が慣例とされる在任2年(2020年7月)での退任を拒否すれば、8月初めまで半年間延長された黒川氏の定年を再延長しない限り、黒川検事総長の道は閉ざされる。今国会で強引に改正法を成立させても、「結果的に黒川検事総長がなくなれば、安倍政権への批判は『ぱっと消える』」(自民長老)というわけだ。

もちろん、「いまだにアベノマスクにこだわる首相が、簡単に黒川検事総長をあきらめるわけがない」(自民若手)との声も少なくない。ただ、安倍首相の任期は2021年9月末。それまでの衆院解散か任期満了選挙が取りざたされる中で、「あえて黒川検事総長を誕生させれば、選挙での自民党への逆風を強めるだけ」という自民党内の不安も拡大している。

緊急事態宣言の5月末解除に向けて神経を尖らせる安倍首相にとって、「これ以上黒川問題に深入りすれば、コロナ以外での政権の火種になる」(自民長老)のは間違いない。それだけに、「(安倍首相の)心の中は千々に乱れている」(周辺)との見方が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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