44歳男性が「猫動画」で脱サラするまでの経緯 音楽業界から予備校講師、ユーチューバに

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当時、塾がユーチューブで情報を発信することは珍しく、反響は大きかった。こうして趣味の猫動画に加えて、仕事でもユーチューブを使うようになり、動画の経験値を積んでいったわけだ。

「ユーチューブは視聴者の反応がすぐに数字として出てくる。そういう中で、自分のエゴとしてではなく、どうしたら見ている人に楽しんでもらえるか、という視点でコンテンツをブラッシュアップしていった」と獅子目氏は振り返る。

発信し続けることで選択肢が増えた

そして、2019年3月、16年間勤めた予備校から独立。オンラインで英語講師をやりながら、9月にはこれまでの経験を生かして、ユーチューバーの支援や、企業・地方自治体の動画利用を助けるE-ステージを立ち上げた。

これからは、地方自治体の動画配信に力を入れたいという獅子目氏(写真:小幡 三佐子)

自身がユーチューバーであることから、“同業者”に出会う機会も多く、「過去のアミューズで勤めた経験もあるので、こういう才能のある人たちがさらに活躍できる場を作れないかな、と考えるようになった」(獅子目氏)。すでに人気LINEスタンプアーティストや、プロ振付師などの支援を始めている。

今後はとくに、地方自治体によるユーチューブ利用を促したいという思いが強い。「例えば奄美大島は今年、世界遺産になる予定だけれど、伝統工芸である大島紬には担い手がいないなど、いろいろな問題を抱えている。鹿児島県でいえば、お茶やうなぎの産地なのに、あまり全国には知られていない。プロモーションが下手なんです」と獅子目氏。「ユーチューブなど動画を活用すれば、地元のいいものをもっと広くに届けられるのでは」。すでに、「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクと組んで、各地方の名産をユーチューブで紹介する支援を始めている。

音楽業界から予備校講師、そしてユーチューバー兼動画配信支援と獅子目氏のキャリアは目まぐるしく変わっているように見えるが、実は趣味も含めた過去の経験がキャリアを広げる役割を果たしている。音楽業界時代に得た動画やプロモーションの経験が、猫や塾の動画作りによって磨かれ、今に至っている。

その間、大きかったのは、会社員でありながら週1回、外に向けて発信し続けたこと。「発信し続けると、そこでPDCAを回して改善を図ったりするので、それ自体が学びになるし、さらにアンテナを広げようという気持ちにもなる。発信することは、自分の趣味だけではなく、仕事にもすごく生きた」(獅子目氏)。

努力して「安定の〇〇」を手にしたとしても、不確定要素の多い現代社会ではそれが一生の安泰につながるとは限らない。突然独立するとなるとハードルは高いが、自分の経験に基づいて、少しずつ収入源を多様化していった獅子目氏から学べるところはありそうだ。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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