44歳男性が「猫動画」で脱サラするまでの経緯

音楽業界から予備校講師、ユーチューバに

翌年、3匹の子猫が生まれる。1匹だった猫が2匹になり、妊娠、出産という経過を動画にし、ユーチューブだけでなく、アメブロにも投稿していたことから、ブログ経由でじわじわとファンが拡大。さらに翌年にも家族が増え、現在の「8匹体制」になった。

すっかりスターになった猫たち。ファンにはそれぞれ「推し」がいるという(写真:小幡三佐子)

当初は再生回数を増やしたいという思いから、「子猫の破壊力とハプニングを大事にしていた」(獅子目氏)。例えば、猫が風呂に浮かぶアヒルで遊んでいて湯船に落っこちてしまう映像は、1600万回再生を記録。ひたすらゴキブリのおもちゃで遊ぶ映像は、なぜかインドやインドネシアでウケた。今では「推し猫」がいるコアファンもいるという。

とはいえ、かわいい猫が複数いれば食べていけるほど、動画の世界は楽ではないだろう。獅子目氏がそれなりの「センス」を得たのには、塾講師以前の経歴が大きく影響している。

東大卒業後、芸能事務所に就職

出身は鹿児島。幼い頃は奄美大島で暮らしたこともある。東京大学に進学してからは、4年間バンド活動に明け暮れ、理系ながらうっすらと「いつかは音楽やエンタメの世界で働きたい」と考えていた。それもあって卒業後は、サザンオールスターズなどを擁する芸能事務所アミューズに入社。「理系の東大卒なのに」と社内でも珍しがられた。

入社してすぐ、京都で発掘された新人バンドを育成し、デビューさせるプロジェクトを任される。もともと自身が音楽をやっていたこともあり、バンドメンバーと試行錯誤しながらプロモーションを考えた。この頃から路上ライブを撮影するなど、映像技術を身につけていったという。

「サザンとか福山(雅治)さんの現場に入り、日本のエンタメの最先端を“内側”から見られたことは大きかった。それは表面から見ているのとはぜんぜん違う」と、獅子目氏。「例えば、トップランナーと呼ばれる人たちがどんな信念やマインドを持ってやっているのか、どうやって周りに支えられているのか、というのを知ることができた」。

しかし、3年すると家族の都合でより収入を増やす必要に迫られた。そこで、大学時代にアルバイトをしていた医学部専門の予備校で、非常勤講師として英語を教えるようになる。腰掛けのつもりだったが、1年後には社員となり、教室長に。プロモーションからホームページの立ち上げ、パンフレット作り、広報業務まで任された。この時に生きたのが、アミューズでの新人バンド育成経験だったという。

勤めていた予備校は医学部専門の老舗だが、当時は参入が相次ぎ、差別化を迫られていた。そこで考えたのが動画の活用だ。すでにマンチカンズTVを立ち上げていたこともあり、ユーチューブの使い方にも慣れていたので、予備校のチャンネルを開設。「併設する寮での合宿の様子や、スタッフの思いや卒業生の声など、文章ではなかなか伝えにくいところを動画にした」(獅子目氏)。

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