ドローン、「学校」乱立であらわになった弊害 受講生と企業との間に深刻なミスマッチ
その一方で、ドローンスクールの乱立による弊害が生まれている。ドローン活用のコンサルティングを行うドローン・ジャパンの春原久徳会長は「ドローンスクールは、ドローンを飛ばせる講師と飛ばす場所さえあれば事業ができ、参入障壁が低い」と話す。そのため、スクールの質は玉石混淆になりがちだという。
多いのは、2~4日間で受講料20万~40万円程度というコースだ。航空法などの講習と飛行訓練がセットになっているが、飛行訓練の場所や講習1回あたりの指導人数などにばらつきがある。
あるドローンスクールの管理団体の経営者は、「空間の限られた体育館の中で10時間飛ばすのか、風のある屋外で数百メートル先のドローンを操縦するのかで必要な能力は異なるが、受講者は区別できていない」と話す。
ドローン学校を出ても仕事がない
神奈川県内に住む元自動車整備士の男性は、体調不良で会社を早期退職。「ドローン操縦士が足りていない」というドローンスクールの広告を見て、ドローン関係の仕事をしてみたいという思いから申し込んだのが始まりだ。
男性は、講習と屋内での飛行訓練のコースを受講して認定資格を取得。ドローンも購入し、講習料と合計で80万円近くを支払った。しかし、新たに始めたドローンによる測量では、風のある、高い高度飛行の経験が必要になり、屋外で飛行訓練を行う別のドローンスクールに通い直した。追加のスクール授業料に約30万円かかったという。
だが、この男性のようにスクールを卒業しても容易に仕事を得られるわけではない。ドローンの産業利用が注目されて以降、スクール受講生の目的は趣味から業務用へ変化したが、前出の春原氏は「2017年以降、ドローンスクールを出ても仕事がないという状況になっている」と指摘する。
空撮や農業の分野では従来からドローンを使う仕事は存在した。しかし、点検や物流などの分野では2019年まで実証実験としての利用が中心で、収益を継続的にもたらすような仕事はわずかだ。ある講習団体の運営者は「もっと早くドローンの実用化が進むと思っていたが、大手企業がドローンへの投資を足踏みしている」と漏らす。
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