「コロナ危機」に直面した時に必要な8つの視点 経営学の視点から政府の対応を考える

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第五のステップは、自発的な行動を促すことである。これについては、政府は国民に行動変容を訴えてきたが、明確なビジョンと戦略がないまま行動変容を求めても、すべての国民には響かない。まずは、第三、第四のステップをしっかりとやることが必要である。

第六のステップは、短期的成果を実現することである。東京では感染者数が減少傾向ではあるものの急減には至っておらず、既に緊急事態宣言の延長は不可避ではないかと国民の多くが思い始めている。短期的成果が実現できず、延長ということになれば、国民の間に失望感が広がることは避けられない。

第七のステップは変革の波を次々と起こし変革を推進すること、第八のステップはリーダーが交代しようとも勝利をもたらす新たな行動を続けるようにして変革を根付かせることである。

過去を振り返ると、2003年にはSARS、2012年にはMERSの2回のコロナウイルスの経験があった。その経験は生かされたのかという疑問は残る。

今回の新型コロナが終わった後こそ、政府内に組織としての教訓を植え付け、新しい危機が登場した時に、適切な対応ができるよう、しっかりとした仕組み作りを確実に行うことが必要である。

問われる首相のリーダーシップ

コッター教授の主張する企業変革を成功に導く8つのステップの視点から、政府が行うべきことを見てきたが、こうした変革、再生を行う時の大前提は優れたリーダーがいることである。何事も人間がやることであるから、適切なビジョンと戦略を構築でき、人心を掌握してそれを実行することができるリーダーが存在しなければ、すべては絵にかいた餅に終わる。

今回、リーダーである首相の対応は官僚と専門家任せの受け身な対応であり、これでは国民からの支持は得られない。政権の不支持率が支持率を上回るようになったのも、うなずける。こうした状況を覆すためにも、首相のリーダーシップが問われている。 

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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