コロナで相次ぐ「最低投票率」の中に見た希望 緊急事態宣言以降、市区長選の7割で過去最低
1月19日〜4月5日に実施された18の選挙では、前回より投票率を下げた自治体が多かったものの、「過去最低」は7選挙にとどまった。一方、7都府県への緊急事態宣言直後、4月12日の選挙では、8市中7市が過去最低の投票率となった。同19日も含めると、15市・区長選挙のうち、11市(73%)で「過去最低」。このうち、富山県魚津市では前回選挙から25.15ポイントも低下した。
影響は首長選挙だけにとどまらない。4月12日の福岡県行橋市の市議選(定数20)では、福岡県が緊急事態宣言の対象地域となっていたこともあり、投票率は45.11%。過去最低だった前回を15.66ポイントも下回った。
早稲田大学の遠藤晶久准教授はこう指摘する。
「そもそも、地方選挙の投票率は年々下がる傾向にありました。そのうえで、『感染リスクを冒してまで、投票には行く必要はない』と考えた人もいたと思います。感染拡大を防ぐ観点から、選挙運動は大幅に縮小されましたから、選挙の情報が届かなかった有権者もいると思います」
それでも、「投票率の高低にはさまざまな要因があり、一概には言えません。むしろ、投票率は今後上がる可能性もあります」と遠藤氏は話す。なぜだろうか。
「政治と生活」のつながり実感
遠藤氏が注目するのは、4月19日の選挙結果だ。7市・区長選挙のうち、過去最低とならなかった3自治体(山口県美祢市、静岡県伊豆市、東京都目黒区)では、前回よりも投票率が上昇している。
「在宅勤務が増えたり、遠出をする機会がなかったりしたことで、『散歩』のような感覚で近所の投票所に行く機会が増えたのではないでしょうか」と遠藤氏は推測する。
だが、もっと重要な変化があるという。
「感染リスクがあったとしても、投票行動にはそれを上回る価値がある、と考えた人が多かったはずです。今ほど『政治によって生活が変わる』ということを実感できるときはないからです」
新型コロナウイルスの影響は世界中で広がっている。ほかの自治体、他国の政治家の行動や発言を見て「頼りになる人物なのか、そうでないのか」という差が明らかになり、市民が政治家を選ぶことの意味が浮き彫りになった──というのが遠藤氏の主張だ。
「しっかりとした対抗馬がいる場合、有権者は『今回は投票したほうがいい』となる。一方で、そうでない場合には、『リスクを冒してまで投票に行く必要はない』と考える人が多かった。これが、投票率の二極化につながっているのではないでしょうか」
「選挙なんかやっている場合か」なのか?
新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、市民の不安は消えない。共同通信などの報道によれば、「選挙をやっている場合か」という声が寄せられた選挙管理委員会もあるという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら