コロナで相次ぐ「最低投票率」の中に見た希望 緊急事態宣言以降、市区長選の7割で過去最低

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4月に市長選のあった大阪府茨木市、大東市の両市長は4月1日、総務省と府選管に対し、「感染拡大のリスクがあり、選挙の執行は適切ではない」と延期を求める意見書を出した。茨木市によれば、府選管からは「政治の空白を生じさせないためにも選挙の執行は必須であるが、感染症対策には適切に取り組む必要がある」との回答があり、総務省からは「(選挙は)民主主義の根幹をなすものであり、決められたルールの下で代表を選ぶことが大原則であることから、有権者にも予防対策を講じていただき積極的な投票をお願いしたい」という趣旨の返事があったという。

遠藤氏も「選挙は予定通りの日程で行われる必要がある」と言う。

「選挙は、定期的に行われてこそ意味がある。政治家には、任期があることを前提に権限が付託されています。権威主義体制では何かと理由をつけて、その権限を延ばそうとします。民主主義社会において、正統性を欠いた人の政策を受け入れることはできません。また、いつまでこの状況が続くかわからない中で、『延期』の議論はできないと思います」

投票時の感染を抑えるためにネット投票などを求める声もある。これについてはどうか。

遠藤氏は「技術的に可能だとしても、選挙結果への疑念が生まれる可能性があり、現実的ではありません。むしろ、人の密集を避けるために、現状の制度でもできることがあります」と言う。

例えば、選挙期間を長くすることだ。現行制度では、知事選や参院選は17日間。それに対し、市長選・市議選は7日間(政令指定都市は9日間)しかない。町村長選・町村議選にいたっては、わずか5日間だ。投票日の密集を避けようと期日前投票をしても、それほど効果はないだろう、と遠藤氏は指摘する。

また、現在の選挙運動は、街頭での握手や演説集会など、「対面」コミュニケーションが前提になっている。2013年からインターネット選挙運動が解禁されたものの、特に地方選挙では、必ずしも普及していない。

遠藤氏は言う。

「選挙情報に触れる機会が減れば、知名度のある現職が圧倒的に有利になります。有権者に情報が行き渡るよう、選挙期間を長くすることを検討する必要も出てくるでしょう。開票作業についても、急がなければ、人を減らしてできるはずです。選挙は早さよりも正確さが大事です」

今年は夏までに、衆院静岡4区補選(4月26日)、沖縄県議選(6月7日)、東京都知事選(7月5日)、鹿児島県知事選(7月12日)など、注目の選挙が目白押しだ。

「政治と生活のつながりを肌で感じて、現職を応援する人にとっても、新人を推したい人にとっても、今回の選挙は行ってやろう、という人は多いはずです。今後の投票率がどうなるか、注目しています」

取材:笹島康仁=「フロントラインプレス(Frontline Press)」

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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