まるで「持ち込み原稿」?論文審査の裏側 ふつうの人はほとんど知らない研究評価システム事情

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専門誌と同人誌との共通点とは?

さて、学者の専門誌が普通の雑誌とかなり違う点はいくつもあるが、たぶんいちばん変わっているのは、掲載を決定している人々が、編集長からレフェリーに至るまで、同じ経済学者仲間である点だろう。

市販の雑誌だったら出版社の編集部が誌面を決めるのが普通だろうが、専門誌の作り方はこれとは大いに違って、いわば内輪で作っているというわけだ。イメージとしては、サークルの会誌とか同人誌とかが近いかもしれない。

こんな仕組みになっているのには、もちろんそれなりの理由がある。一言で言えば専門論文の良しあしを判断するには専門知識が不可欠なので、学者自身が編集するほかないと考えられているのだ(例外については、次回紹介しようと思う)。

もちろんこういう方式を採っていると、特有の問題もいろいろと生じてくる。このうち僕がいちばんの問題点ではないかと思うのは、専門誌の編集はみんなが「片手間」でやっているということだ(この点もサークルの会報や同人誌とかに似ているかもしれない)。

編集委員やレフェリーは「本業」ではなく、無給のことも

さっき書いたとおり、編集委員は大学の教員だったりその他の機関で研究職に就いていたりして、基本的に、本業はそこでの仕事だ。当然、編集業に割ける時間は、本業に比べて圧倒的に少ない。

さらに言えば、編集関係の仕事は大学教員の仕事の中でも最も報われない仕事のひとつだ。たとえば金銭的なことについて言えば、編集委員やレフェリーは無給で働くのが普通だ。

ある経済学ジャーナルの表紙。左端に編集委員の名前一覧が掲載されている(真ん中は目次)。学者の世界は名前が売れてナンボ、みたいなところがあるから、無理をすれば編集委員の「見返り」と言えなくもないかもしれないけど……さすがに弱い

ジャーナルによってはお金をくれたりするところもまれにあるが、ほんのお小遣い程度で、教員としてのほかの仕事と比べるとまったく割に合わない。

僕の場合は5種類のジャーナルで副編集長や編集委員をしているのだが、そのウチのひとつが年間数万円くらいくれるほかは、無料でやっている。

※ところが出張先のコーネルで聞きかじったのが、最近できたとあるジャーナルでは編集長が1000万円近い年俸をもらっているという話。今までに聞いたことのある最高額が100万円くらいだったのでびっくりしたが(今でも聞き間違いでは?と思っている)、後発ジャーナルが生き残りを目指して頑張っているということなのだろうか。

そんな状況なので、編集長以下レフェリーに至るまで、ジャーナルの仕事は、基本的に責任感によって支えられているところが大きい。学者として論文を書いて、それを誰か同じ分野の学者に査読をしてもらう以上は、自分もお返しに査読の責任を果たさないといけない、というわけだ。

いや、もっとぶっちゃけて言えば、責任感というより、付き合いでやっているというほうが実態に近いかもしれない。あんまりサボっていると学者仲間に白い目で見られるから、仕方なくやっているという人も多いのではないかと思う。

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