5歳以上年下妻がいる夫は年金に注意が必要だ 妻が若いと思わぬ「家計の負担」が増える?
ここまでの話からすると、配偶者加給年金は、年上の夫と年下の妻の年齢差が大きいほうが、加算の期間も長くなって得するように見えます。ところが、年齢差が5歳より大きく離れていると、注意が必要になります。
夫が65歳で会社を退職した場合、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けとれるようになって、本格的な年金生活が始まることになります。年下の妻がいれば加給年金の加算も始まりますが、5歳1カ月以上離れている場合はどうなるでしょうか。夫が65歳0カ月時点で、妻は60歳未満(60歳の前月以前)ということになるので、それまで夫に扶養されてきた専業主婦やパートの妻は「自分で」国民年金保険料を納付しなければいけなくなります。
国民年金は20歳から60歳になるまでの40年間加入義務があります。夫が会社に在職している間、専業主婦などの妻は夫の扶養に入って国民年金第3号被保険者となることができ、年金制度に加入しながらも国民年金保険料の負担はありませんでした。その期間は老齢基礎年金を計算するうえで保険料を納付した期間(保険料納付済期間)として扱われます。
しかし夫が退職する65歳時点で、そうした妻は国民年金第1号被保険者に切り替わり、夫の65歳到達月から妻の60歳到達前月までの各月について国民年金保険料を納付する必要が出てきます。保険料は月額1万6540円(2020年度)になりますが、それを納めて初めて、保険料納付済期間として扱われ、扶養されて保険料負担のない第3号被保険者と同じように反映されることになります。
そうなると、夫が65歳から配偶者加給年金を加算されても、妻は60歳まで国民年金保険料を払い続けなければならなくなり、夫婦の家計は「加給年金によるプラス」と同時に、「国民年金保険料によるマイナス」も受けることになるのです。
夫の加給年金は増えても、妻の国民年金保険料が痛手に
夫婦の年齢差がちょうど一回り、12歳ある場合で考えてみましょう。夫への加給年金は12年分で469万800円(年額39万900円×12年)になりますが、夫が65歳の時点で妻は53歳です。引き続き専業主婦、あるいは厚生年金加入の対象とならないパート勤務の場合、53歳から60歳までの7年間、国民年金保険料を納付する必要があります。7年分(84月分)で138万9360円(月額1万6540円×84月)の負担です。
これで夫婦の家計はどうなるか。加給年金で約470万円の収入がある一方、約140万円の国民年金保険料の支出があることになり、その収支は12年でプラス330万円程度になります。1年あたりに換算すると、プラス39万900円ではなく、プラス27万5000円程度になります。
年齢差がちょうど5歳(5年0カ月)の夫婦であれば、加給年金の収入は195万4500円(年額39万900円×5年)になり、夫が65歳時点で60歳になる妻の国民年金保険料の納付義務はありません。年齢差が12歳の夫婦の場合と比べると、加給年金だけを見れば、12歳差のほうが5歳差より273万6300円(469万800円-195万4500円)多くなります。
しかし妻に発生する国民年金保険料の納付を考慮すると、12歳差のほうが134万6940円(469万800円-138万9360円-195万4500円)だけ多いという計算になります。夫が本格的な年金生活に入っている中では、妻の国民年金保険料は家計にとって重いものとなりそうです。
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