迷走する農業改革、厚い規制の「岩盤」 特区指定も農協保護など「岩盤」
生産法人に若い担い手育たず
政府は農業の「新たな担い手育成」も課題として、40代以下の農業従事者を現状の20万人程度から倍増させる目標を掲げる。農業生産法人の数も4倍の5万法人に増やす考えだ。しかし、ここでも政策の矛盾が指摘されている。
経営者は「農業者」として政府からの補助金を受け取れることもあり、農業生産法人の数は確かに増加しているが、2年間限定の補助金であるため、雇用の拡大につながらず、次の担い手の世代も増えない。その結果、小規模生産法人の数ばかりが増えることになる。
こうした現状では、生産性がなかなか上がらない。稲作を中心に90ヘクタールと比較的広い農地を経営するある生産法人は、従業員募集の基本給は17万円強。所得水準は低く、経営者は「若者の離農が後を立たない」と嘆く。
経営者のみへの補助金では、担い手育成につながらない可能性がある。政府には、経営者に限定せず、従業者も「農業者」として認定し、支援制度を適用すべきとの意見もある。
「一粒たりとも輸入しない」としてきたコメ政策を転換してから20年余り。国内農家対策に兆円単位の国費を投入してきたが、小規模農家を主体とした日本の農業の構造は変わらなかった。
そこにTPPという「黒船」が到来。ようやく抜本的な構造改革に取り組もうとしているが、これまで「先送り」してきた課題を一朝一夕に片付けるには、あまりに間口が広く、奥行きも深い。
自民党議員からは「成長戦略として農業を取り上げたことがよかったのか」と、いまさらながらため息も聞かれる。そうこうしているうちに、農家の高齢化と農村の人口減少という現実が、押し寄せようとしている。
(中川泉 編集:石田仁志 田巻一彦)
*本文の一部表現を修正して再送しました。
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