「副社長職廃止」の背景に「ポスト豊田章男」問題 コロナ禍後に経済を牽引する自動車産業の顔
実際、彼以外では、新型コロナの感染拡大による影響で、自動車メーカー各社の海外生産拠点の多くが操業休止に追い込まれ、国内工場でも生産停止や減産が求められる中で、サプライヤーを含めて、自動車産業の裾野にまで目配りしつつ、生き残り策を探るのは容易ではない。
トヨタは現状、生産体制について、地域ごとの状況に応じた対応をとっている。英国やトルコなどでは、稼働再開予定日を5月11日以降に延長する一方で、フランス、ポーランド、ベトナムなどの工場では、一部稼働を再開した。
中国においては、2月上旬に4工場すべてが停止したが、3月末にはすべて正常稼働に戻った。国内工場では、4月に5工場7ラインを一定期間の稼働停止としたほか、5月以降、5工場の9ラインで非稼働日を設定。また、3工場4ラインを1直化して生産調整する予定だ。
また、医療現場の支援も進める。トヨタは、医療用フェイスシールド(防護マスク)の生産、トヨタ生産方式(TPS)活用による医療機器メーカーの生産性向上支援、ジャパンタクシーなどを使った軽症の感染者の移送支援、治療薬開発や感染抑制に向けた研究支援への参画などのコロナ対策を発表している。
すでに、都内の病院や千葉県に、ジャパンタクシーの車両を架装し、車両後方の空気が前方に流れないようにした「飛沫循環抑制車両」を提供した。
リーマンと3・11を知るのは2人だけ
指摘するまでもなく、豊田氏が自動車業界に強い影響力を持ち、リーダーシップを発揮できるのは、直近のトヨタの業績が盤石だからである。トヨタは、平成30年間に国内で最も時価総額を伸ばした企業だ。
ただし、そのトヨタにしても、コロナ危機は予想していなかっただろう。ましてや、世界中で新車需要が吹き飛ぶような事態に陥るとは考えもおよばなかっただろう。
豊田氏は、東日本大震災後、「石にかじりついても国内生産300万台を守る」と語り、産業の空洞化が進む中で、国内でのモノづくりにこだわった。東北に生産拠点を構え、雇用を生み出し、復興を支えてきた実績がある。
コロナ危機終息後、経済の牽引役として期待されるのは自動車産業である。リーマン・ショック後の混乱や、東日本大震災を社長として経験しているのは、いまや、スズキ会長の鈴木修氏と豊田氏の2人だけであるだけに、豊田氏の任は重い。
日本がコロナ危機を乗り越えるにあたって、豊田氏の真のリーダーシップが試されるのである。
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