「寝台列車の楽園」インドは日本と何が違うのか あらゆる客層が乗車、垣間見える階級格差
まずは昼間の列車に乗ってみよう。ニューデリーからタージマハルがあることで有名なアグラを往復してみた。往路に使ったのは「シャタブディ・エクスプレス」。この列車名は地名などではなく、列車の格を表していて、エアコン付き座席指定車のみで編成される昼間の列車である。夜行にはならないので、比較的短い距離を運行する。片道運賃は1405ルピー(約2200円、筆者旅行時の為替レート、以下同)、距離は199km、この運賃には食事が含まれている。切符はニューデリー駅で購入、購入時にベジタリアンかノン・ベジタリアン(チキンあり)かを尋ねられ、それによってメニューが変わる。
座席は通路をはさんで2人がけが2つの横4列であるが、線路幅が広軌なのでゆったりしていて、隣の人との間にあるひじ掛けは1人ずつある。座席には新聞、ペットボトルに入った水、紙コップが用意されていた。驚いたのは食事の給仕方法で、飛行機のエコノミークラスのように1回ですべて配るのではなく、まずはお茶からはじまり、その後に食事トレイを配り、陶器の皿を配りという順番で行われたことである。
向かい側に座っていた上流階級と思しき男性客は、バナナのおかわりを給仕係に要求し、さらには持ってくるのが遅いと給仕係を叱る場面があり、それはまるで主人と召使いのようであったが、これはインドでは当たり前の光景なのであろう。列車の旅はインド社会を端的に体験させてくれる。
復路は乗り比べの意味でシャタブディ・エクスプレスは利用せず、1つ格下の「タージ・エクスプレス」を利用した。エアコン付きであるが、座席は2―3の5列、食事はないが運賃は550ルピー(約880円)と往路の半額以下である。インドの列車としてはかなり快適なほうであるとは思うが、往路に乗ったシャタブディ・エクスプレスとは明らかに違って人口密度が高く感じる。やはり運賃相応というのは否めなかった。
寝台列車に乗ってみた
インドは世界で最後の寝台列車王国でもある。
インドの鉄道でぜひ体験したいのが寝台列車の旅である。最も優等な列車となるのが「ラージダニー・エクスプレス」であり、この列車はデリーを発着する主要都市行きのエアコン付き寝台専用列車で、座席車の連結はない。
私はニューデリーからインド第2の都市ムンバイまで、「ムンバイ・ラージダニー・エクスプレス」に乗車した。営業距離は1358kmで、昼間の列車はない。交流電気機関車が客車20両を引く堂々とした編成で、内訳は個室寝台1両、2段寝台5両、3段寝台11両、厨房車1両、荷物&電源車2両である。電源車とは、客車のエアコン電源などの発電機のある車両である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら