韓国アシアナ航空、「持ってあと2カ月」の土壇場 買収すべきか否か、悩みが深まるHDC・鄭会長

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航空産業は、業界内で「現金引出機」と呼ばれるほど、資金の流動性が重要な産業だ。航空機の運航によって確保した毎月の収益で、航空機のリース費用など数千億ウォンに達する固定費を支払わなければならないためだ。

現金が回らなければ借金返済に追い立てられてしまう。世界の航空路線がストップした状況の中で、収益を生み出せなければすぐさま存続の危機に直面する。業界内では「政府による支援がなければ世界の航空会社の90%が破産する」という指摘が出ている。

「自力では2カ月持たない」との声も

「アシアナ航空は、自力ではあと2カ月も持たない」という指摘も業界内で出始めた。同社は4月7日、3000億ウォン(約264億円)を短期で借り入れることを決定し、これまで借入金の返済と運営資金に使われる予定だ。今回の決定は、韓国産業銀行が2019年に同社に融資した1兆6000億ウォン(約1400億円)をすべて使い尽くしたことを意味する。航空業界関係者は「アシアナ航空の資金事情を考えると、1カ月持つかどうか。韓国産業銀行の支援がなければ、持って2カ月かもしれない」と打ち明ける。

HDCの周辺では、アシアナ航空の買収を継続するか断念するかをめぐって意見が対立している。買収を主張する側は「コロナが終息すれば航空市場はいち早い回復を見込める。グループの成長エンジン創出のために買収するべきだ」と主張する。一方、買収反対派は「本業の住宅市場の先行きが不透明さを増している中、アシアナ航空買収で莫大な資金を投入すればグループ全体が危機に陥る」と主張している。

財界では、HDCは韓国産業銀行と買収条件の変更で協議中という見方が広がっている。韓国産業銀行と韓国輸出入銀行に対し、HDCが買収資金返済の延期を求めているとの話もある。HDCの事情に詳しいある関係者は、「HDCと産業銀行がアシアナ航空の買収条件で協議中だ。ただ、仮にHDCの要求を受け入れた場合、何か不正や思惑があったとの疑惑を持たれ、スキャンダルへと発展することを産業銀行側が恐れているようだ」と打ち明ける。

専門家の中には、アシアナ航空の買収条件変更が難しければ、HDCが買収を断念する可能性が高まるという見方がある。韓国航空大学経営学部のホ・ヒヨン教授は「HDCの立場からすれば、2019年に締結した条件ではアシアナ航空の買収は厳しいだろう。政府支援もなく、産業銀行も買収条件を変更しなければ、HDCが買収を断念する可能性が高いと思う」と指摘する。

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