「暴力の連鎖」を断ち切った20代女性の半生

福祉制度を「フル活用」して生き延びてきた

「母親の虐待です。物心ついたときから、ずっと。母親は父親に激しい虐待をされていたので、連鎖です」

小学校低学年の頃は母親への激しい暴力を毎日眺めて怯えて過ごす日々だった。子どもの頃から過酷な生活を送ってきた。

「父親は母に包丁突きつけたり、実際に首に切り傷を負わせたり。ハードなDVをしていて、最終的に調停離婚しました。母はイケメンってだけで父親と結婚したみたいです。母は父親のDVの反動で、私に暴力を振るうようになった」

母親は彼女を連れて母子支援施設を頼った。そして、母親による娘への暴力が始まった。

激しい虐待を受けながらも「保護」を拒んだ理由

「鼻血が出るまで毎晩殴られる。理由はなにもなくて、小学生のときは学校から帰ってきて『お母さん、こうこうこういうことがあったよ』って話をすると、うるせえみたいな。初めて保護されたのは小学校4年のとき、その頃から暴力を受けることが、なんか気持ちいいって思うようになっちゃった」

暴力が日常となると、被害者の精神が乖離することがある。堀井さんは虐待されることが本当は痛くて怖いのだけど、気持ちいいと本気で思い込むことで、その悲惨な日常を受け入れた。

「母に対してあえてちょっかい出したり。どうせ痛めつけられるんだったら、精神的なつらさを肉体的なつらさで紛らわしたいみたいな。だから自分から殴られにいったこともありました」

児童相談所に保護されたのは、虐待が始まって数年後、母子寮をでて団地に住んでいたときだった。近所から通報が入った。

「早い段階で保護がなかったのは、私が一時保護をかたくなに拒んでたから。やっぱり豹変した母より、お菓子買ってくれたりする温厚なときの母を信じたかった。でも、あまりに暴力がひどいので最終的には保護されました」

母親からの暴力で、一番つらかったのは入浴時だ。母子寮では家庭ごとに浴場の使用時間が決まっていて、母親と一緒に入浴しなければならなかった。

「お風呂場でどつかれたり、水浴びせられたり、タイル貼りで硬いので痛い。小学校の高学年ぐらいからつらくてお風呂に入らなくなった。小学校行っても、フケついてるだの、臭い、汚いって言われて、そのあたりから幻覚とか幻聴が出るようになりました」

幻聴は統合失調症の症状だ。虐待によって脳のネットワークがうまく働かなくなった。人の気配が気になり、通学路を遠まわりするようになった。だが実際は人の気配はない。理由なく、怯える彼女をクラスメイトは気持ち悪がった。

「隣のマンションの男が監視してるとか、隠しカメラついてる、盗聴器あるとか。統合失調症の典型的な症状が出ました。それで中学2年のとき、また児相に保護されて養護施設です」

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